2018年2月22日
0:00
今泉「友梨奈!起きてっ!友梨奈ぁ!!」
ただ事ではない声に少女たちは目を覚ます。
今泉は傍らに眠る平手の腕を揺する。
平手「……ん……」
平手は目を覚まし上体を起こす。
周りを見渡すと見慣れない教室にいた。
机やイスはないが何の変哲もない至って普通の教室だ。
逆に何もないことが異常さを引き立てている。
今しがた起きたばかりのメンバーたちも同じように周りを見ていた。
平手「ここどこ!?」
今泉「わかんない!」
首を横に振る今泉。みんな同じ状況のようだ。
一体何が起きているのか、起ころうとしているのか。
平手「…………」
一番最初に思い浮かぶのがテレビだった。
迂闊に言葉を発することができず、誰も喋ろうとはしない。
菅井「みんないるぅー!?」
そんな中、キャプテンの菅井が立ち上がり自分を含む21人いることを確かめる。
漢字欅が全員いることに安堵するも、絶対的な不安は拭えなかった。
理佐「これどうなってんの……?」
理佐は訳の分からない状況に置かれて苛立ちが募り聞かずにはいられなかった。
守屋「…………」
理佐の問い掛けに顔を見合わせるだけで誰も何も答えない。
静寂しか返ってこないことに怒りを露わにする。
渡邉「ねえッ!!」
菅井「分かんない……っ」
現状に無知なことを責められているようで非を感じる。
理佐は小さく舌打ちをしどこかへと歩き出す。
菅井の横を通る際に呼び止められる。
菅井「どこ行くの」
聞くまでもなく行く場所など決まっているが止めるために訊ねる。
理佐「……」
答えるまでもなく無視して行く理佐。
追いかけて珍しく声を張り注意する。
菅井「勝手に動かないでよ!」
理佐「じゃあずっとここに居ろって言うの!?」
菅井「……っ」
ここまで怒りを表に出す理佐も珍しく、教室の空気が張りつめる。
再び歩き出そうとした時、今泉があるモノを見つける。
今泉「あれ何ィ!?」
叫ぶ今泉が指差す黒板を見る。
チョークで書かれたと思しき”BR”の二文字に注目する。
理佐「ビー、アール……?」
織田「誰のイニシャルとか?」
原田「名前が”B”から始まる日本人っている?」
土生「じゃあ外国人?」
小林「そもそも人かどうか……」
石森「ブル・ドッグとか?」
渡辺「???」
それが何を意味するのか一同が首を傾げる中、ただ一人”軍曹”の異名を持つ彼女にある言葉が浮かび上がる。
守屋「バトルロワイアル?」
メンバーはざわつき、血の気が引いていくのを感じた。
理佐「――!!」
鈴本「!?!?!?!?」
小池「っ」
菅井「ウソ」
守屋は自分が口にした言葉の意味を思い出すと、背筋が凍りつくような戦慄が走る。
少女たちは座っていながらもただへたりつくすことしかできなかった。
0:05
佐藤「ぁあぁああぁぁあぁああぁあああ……!!!アゴが――」
土生「今何時!?」
上村「スマホ持ってなーい!」
尾関「……えッ?ドッキリ?」
小林「ドッキリじゃない。これは――」
小池「これ、アカンやつや……」
長濱「嫌な予感がする……」
米谷「頭が、痛い」
渡辺「…………ん?」
渡辺はいつものようにキョロキョロしているとあるモノを見つける。
それは一つだけではなくいくつもあり、最後は自分の首に手を這わせ始めた。
渡辺「……!!!」
彼女の瞳がただ事ではないと告げていることに守屋が気づく。
守屋(……何?チョーカー?)
プライベートで着けているメンバーはいるが、渡辺が着けているのに珍しく思う。
それ以前に衣装である制服を来ているのにチョーカーを着けていることに違和を覚える。
すぐに自分の首にもそれがあることを知る。
守屋「って私にもお!?」
気づいた瞬間、冷たさと何故だか命の危険を感じた。
他のメンバーも首の異変に気づき慌てふためく。
石森「うっわ!!チョっ、コれマじなンなの!?」
土生「え、外れないんだけど!!」
上村「なんか苦しい……」
渡辺「ん~~……!!」
力ずくで外そうと試みるも固くてどうやっても敵わなかった。
齋藤「ちょっといったん落ち着こ!」
今泉「ふーちゃん……!」
震えてへたり込こんでいる菅井に代わり齋藤が立ち上り仕切る。
齋藤「誰かここに来たこと覚えてる人いる?」
尾関「なんか~ここで撮影してたんだっけ?」
志田「してないから!」
土生「てか、なんでみんな避雷針の衣装着てんの?」
少女たちは全員5thシングル収録曲『避雷針』の制服を着ていた。
織田「そうだ!ケヤカケで避雷針のスタジオ収録するために別のところで撮るつってバスに乗って~~それから…………」
長沢「それで、気づいたらここに?」
21人でバスに乗り込み、移動していたことを思い出す。
しかし、誰も教室まで来たことは覚えていない様子だ。
原田「みんな眠ってたってこと!?」
出来過ぎた状況に隠しカメラでこの様子を見られているのではないだろうかと疑う。
カメラを見つけることに長けている渡辺を以ってしても見つけられないでいる。
扉を開けたら外に看板を持っている芸人がいるかもしれない。
理佐「……っ」
理佐が開けようか迷っていた出入口が目の前で勢いよく開かれた。
??「ばごーん!!!!」
理佐「!!!」
突然の外からのアクションに一同は悲鳴を上げて、近くの者と抱き合う。
志田「ひゃあぁあああああっ!!!!」
小池「ひいぃいいい…………!!!!」
馴染みのある言葉と手のポーズをして入って来たのは坊主頭の男だった。
理佐「さ、澤部サン……!?」
土生「サワビさーん!」
彼の登場により少女たちは心底胸を撫でおろす。
冠番組の寝起きドッキリと知り、口々に文句を言う。
菅井「澤部さん!!これは一体何なんですか!?」
守屋「ヒドイヨ!」
小池「もお~~!なんなんホンマにい!!」
志田「ガチで焦ったわ!」
織田「やっばやっば!!」
上村「あれ、土田さんは?」
長沢「安心したらお腹空いてきた」
澤部「はーい静かにー!まあとりあえず座れー!」
手を叩いて少女たちをその場に座らせる。
守屋「?」
カメラマンやマイクマンはおらず澤部たった一人で教室に入って来たことに疑問に思う。
澤部は黒板の前に立ちいつもの調子で話し始める。
澤部「えーこのグループはすっかりダメになってしまいましたァー」
鈴本「………………は?」
少女たちは突然の剛速球に面食らい、教室の時が止まる。
澤部「とゆーわけでッ!ここにいる21人の中でたった一名の優勝者が決まるまで――殺し合いをしてもらいます!!」
守屋「なっ……!?」
小林「 」
長濱「…………」
一同は開いた口が塞がらず固まり頭が真っ白になった。
小池「なに、言うて――……」
当然のリアクションに澤部は補足する。
澤部「えっと~お前らの次のシングルなんだっけ?守屋ァ!」
突如指名され来月発売の6thシングル表題曲を戸惑いながらも答える。
守屋「が……『ガラスを割れ』、です……?」
澤部「ガラスは割らせません!!お前らは、風に吹かれておしまいだ~!!」
5thシングルの表題曲にかけて終わりと宣告される。
菅井「ちょ――ちょっと待ってくださいっ!!!」
澤部「なんだー菅井?」
菅井「さ、サバイバルゲーム……それが今回の企画なんですよね?」
澤部は頭をかき大きなため息を吐いて答える。
澤部「ゲームじゃありません。台本なしっ、ガチの殺し合いですッ!!」
守屋「がち……?」
澤部「ちなみに、これは三年前からアイドルグループを対象に年に一度行われていますー」
菅井「うそ……!」
澤部「そしてぇー!今回第四回大会は欅坂46が選ばれましたー!ハイ拍手ぅー!!」
拍手するメンバーはおらず、澤部の手を打つ音だけが虚しく響く。
当然誰も信じられないでいる。
まだテレビだと思っている者もいる。
もし本当だとしても誰が信じたいと思うか。
澤部「は~~。やっぱ信じられないかー?しょーがない。おーい入って来てくれー!」
澤部は廊下に向かって呼び掛けると、黒服にサングラスの黒ずくめの男2人が教室に入って来る。
黒服等は蓑虫のような大きいズタ袋を担いでおり、それを少女たちの前に置く。
床に置いた音で中身が重いものだと予想できる。
守屋(大きい……。何……?何が入ってるの――!?)
鈴本(なんだかヤバイ――!)
ここでこれが出てくるということはある程度嫌でも予想はついてしまう。
土生(お願い!!土田さん……それか岩井さんであって!!)
澤部の相方が例の看板を持って出て来ることを祈る。
澤部「袋の中身は何だっろな~?それでは、中身をオープン!」
指示に従い黒服はジッパーを開け、中身を少女たちに見せる。
守屋「あっ……ぁあああッ!!?」
澤部「お前らのマネージャーでーす!」
中には漢字欅のマネージャーだった人が入っていた。
頭部を撃たれ一目で死んでいると判断できる。
志田「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
小池「いやっ!!イヤァ!!!嫌ああああああああああああああああああああ!!!!」
石森「ぎょええぇええええええぇえええぇええええええええええええええ!!!?」
齋藤「うっぷす!!!」
鈴本「!??!!!????!!!!!??????」
教室は阿鼻叫喚の渦に飲み込まれる。
少女たちは泣き、叫び、喚き、吐き、倒れる。
平手「や、っさ。ん――」
菅井「こんなっ……、ことって……っ」
澤部「信じさせるためにこれがいっちゃん手っ取り早いんだよなあ!みんなァこの人に感謝しろよお!!」
守屋(に、人形――じゃない!!ほ、本物の人間だ!!!てことは……殺し合いは――ガチ)
全員が殺し合いがテレビではなく、現実のものだと突きつけられる。
黒服等は逆再生のように死体を片付けて、今度は紙と鉛筆を持って来た。
澤部「それでは細かいルール説明の前に、紙に『私たちは殺し合いをする』と三度書きなさい」
黒服は人数分の紙と鉛筆を雑にバラ散く。
澤部「表は島の地図になってるからなーそのまま持っとけよ~」
守屋(し、島!?じゃあ逃げることは――)
さらっと衝撃事実を告げられ、逃げることができないと絶望する。
陸であればシガンシナ区のような50メートルの壁がない限り逃げらると思っていた。
書かなければどうなるか分かったものではなく、少女たちは泣きながら紙に筆を歩かせる。
澤部「ん?」
たった一組だけ紙と鉛筆が転がっていた。
つまり誰かがまだ取らず、書いていないメンバーがいる。
澤部(平手か――いや守屋?……二人とも書いている。じゃあ誰が……)
佐藤「私は嫌だ!!!!!!」
佐藤は髪を振り乱して立ち上がりながら言い放つ。
いつものへなちょこな感じではなく、これでもかと怒りを表に出す。
菅井「し、詩織!?」
澤部は坊主頭を掻きながら佐藤に訊ねる。
澤部「どうした佐藤?何だ?」
佐藤は長いため息を吐き、長い話を始める。
佐藤「どうして私たちが殺し合いなんてしなくちゃならないんですかあ!!」
澤部「それは初めに言っただろー!このグループがダメになったからだよお!!」
佐藤「意味が分からないですう!!!」
澤部「自分の胸に聞いてみろォッ!!」
佐藤「ひっ!?」
番組ではふざけて声を張ることがあるが今は真剣に怒り、メンバー全員を怖じ気づかせる。
足が震えようと佐藤は負けじと男へ立ち向かう。
佐藤「だ、だからと言ってえ~~!!殺し合いしましょうハイ分かりましたなんて言う人がこの世界のどこにいるって言うんですかあ!?」
澤部「…………」
佐藤「それにっこんなことふつーに犯罪ですからあ!!ただで済むとっいいや許されると思ってるの~~!?今すぐに110番で警察に通報して捕まえてもらいます!!」
澤部「長ーいッ!!!!」
佐藤「と、とにかくぅ~~!!私はもうお家に帰らせてもらいますからっ!!」
澤部「じゃあ佐藤は棄権とみなしてもいいんだな?」
フンと佐藤はそっぽを向き、堂々と教室から出て行った。
澤部はやれやれと言った顔をして見送る。
すぐに廊下からただならぬ声と暴れるよう音が聞こえてくる。
佐藤「ちょっと……!離して!!……ヤーダー!!!――行きたくなーい!!!!」
齋藤「し、詩織っ!?」
髪を振り乱して抵抗し、新たな黒服2人に両側から連行され教室に戻された。
計4人の黒服が立ちはだかり威圧され、少女たちは心と体を震わせる。
澤部「もっかい聞くけど、本当に棄権でいいんだな?」
澤部は最後の機会を与える。
イエスかノーか。生きるか死ぬか。
守屋「だ……め――」
止めないと最悪の事態になることを恐れるも、恐怖で声が出ず口パクになる。
制止の声も届かず、完結に意思を訴える。
佐藤「棄権もへったくれもなーいっ!!!私は死んでも殺し合いなんかしないッ!!!」
彼女の意思は固く、揺るがない。
澤部「そうか。ならしょうがないな」
澤部は残念そうに言うと黒服に「やれ」と合図する。
黒服がタブレットを操作するとピッ、ピッ、と機械音が一秒間隔で鳴り始めた。
志田「何!?何の音?!」
理佐「どこから――……」
音の発信源は佐藤の首のチョーカーからだと判った。
佐藤「嘘っ、えッ、やらぁ!?澤部さんっ何をしたんですかあ!!首から音があああぁあああああ!!!!」
澤部「え~佐藤はゲームから降りるということで、死んでもらいまーす。あと20秒でチョーカーが爆発するぞー!」
菅井守屋「!?」
自分たちの首に爆弾があると告げられ青ざめる。
佐藤のそれが今まさに爆発へのカウントダウンが進み続けている。
佐藤「う、嘘だああぁあああぁああっ!!!やらぁああああああああああああ!!!誰が助けてええええぇえええええ!!!!」
助けを求めてメンバーたちに近寄る。
メンバーはお馴染みの風船破裂の如くみんな逃げていく。
志田「いやああああああああああああぁあああああぁっ!!!」
上村「こっち来ないでッ!!!」
小池「ひょおぉおおおおおおおおおぉおぉおおほほー!!!!!」
渡辺「ワ――ワ――ワ――!!!!!」
教室はしっちゃかめっちゃかになる。
佐藤が磁石のS極なら他の人はN極のように避けていく。
カウントダウンの音は次第に加速し大きくなる。
佐藤「あぁあああ……あぁぁああああ。あああぁあああああ・あ・あ・あ……」
やがて佐藤は行き場を失い教室の中央に立ち目をつぶり耳を塞ぐ。
齋藤「を――お願いします澤部さん……!止めて下さいッ何でもしますからァ!!」
澤部「あいつが大会に参加しないからだぞ。あと、話が長い!」
齋藤「!!!?」
澤部は起爆している首輪を止める気はない。
首輪の機械音は最高潮まで早くなり終わりが近いことを悟る。
佐藤「あっ……アッハ!!これっテレビだあ!!爆弾なんて嘘っぱちだ~~!!!こんなことあるわけがな~い私のリアクションを見るためにこんな手の込んだことしてるんでしょおっ!!」
涙と涎を垂らし笑いながらドッキリだと思い込んでいる。
齋藤「詩織ィイ!!澤部さんに謝って!」
菅井「それ以上喋っちゃダメ――」
齋藤や菅井の制止の声もお構いなしというより耳に届かず、弾丸のような長話も最高潮を迎える。
佐藤「この際だから言わせてもらうけど私は頭の中にある言いたいことをぜーんぶ言わないと気が済まないのっ!!!」
佐藤「だから今日は好きなだけ喋らせてもらうよどうせ本番になったらカットされちゃうんだから長く話せば話すほどどこか少しは使ってくれるよね私はあと80年喋って喋って喋りつづ――」
話しの途中でチョーカーが発光し爆発した。
守屋「ぁ」
飛沫した血が一番近くにいた守屋の顔に数滴かかる。
硝煙が上がると同時に何かが床に落ちる。
それは二年半を共に活動した佐藤詩織の生首だった。
寿命であれば100歳まで長生きしたであろう佐藤詩織の人生は終わった。
先刻までの嵐のような喧騒は過ぎ去り静寂が訪れる。
澤部「これでようやく静かになったな!」
米谷「あっ……ぁあ…………っ!!」
マネージャーの死体を出された時、心のどこかで作り物だと願っていた。
ドッキリのために精巧に用意されたものだと思っていた。
目の前で生きていた人間の首が飛ぶ瞬間を見てその可能性は粉々に砕け散った。
菅井「し、お……り――」
守屋「~~~~~~~~~~!!!」
マネージャー、そして佐藤を殺された怒りが頭を埋め尽くす。
守屋「うっ……ぅうああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」
欅「!!!」
守屋は怒りの咆哮を上げながら、坊主頭に向かって走る。
その表情はかつて見せたことがないほどの鬼の形相をしている。
齋藤「茜ェ!!」
米谷「よせ守屋……!」
澤部「ん~やっぱりお前はガチかあ!!」
想像に反しない反応を嬉しく思い、懐から取り出した拳銃を守屋へ向ける。
守屋はそんなモノなど視界に入らず猪のよう突っ込む。
澤部が引き金に指をかけた時、横槍が入る。
??「ごめん、茜――」
守屋「……え」
守屋は真横から右目に拳をもらい壁まで吹っ飛ばされた。
殴打した人物は守屋の代わりに澤部の前に立つ形になる。
澤部「す……菅井ィイイ!!」
そのまま菅井に標準を定める。
菅井「なんでも、ありません……!申し訳ありませんでした……!!」
謝りたくない人に頭を下げ、ぎゅっと拳を握りしめて必死に感情を抑え込む。
守屋「×××」
馬を手懐ける腕筋から繰り出された拳に堪え悶絶する。
菅井「許して……」
許しを請う声を聞き、意識が途切れる。
アイツ愛無いし
澤部「たっくぅ、次逆らったやつは即バーン!だかんな~」
拳銃をチラつかせて脅し懐に仕舞う。
蝶ネクタイを締め直し、下らない前置きをしてからルール説明に入る。
澤部「えー既に一名死んじゃいましたが、あと守屋は眠っていっていますがー。たった一名の優勝者が決まるまで殺し合いをしていただく”バトルロワイアル”の細かいルール説明をします」
澤部「みなさんに支給されるのは一つのスクールバッグです。その中に多少の食料と飲料水、時間や地図などが見れる腕時計”ウォッチ”、それと戦うための武器が一人二つ入ってます」
ピースして二つ武器を与えることを伝える。
澤部「武器はそれぞれ違うものが入ってます。銃器から刃物など種類はピンキリです」
澤部「さっきも言いましたがここは島です。お配りした地図を見て下さーい」
先程『私たちは殺し合いをする』と書かされた紙の表の地図を見と菱形の島にいくつかの地図記号があった。
澤部「我々が今いる分校は島の中心にあります!無人島ですので思う存分殺り合えよ!俺たちは島の外の船にずっといるからな!みんなが頑張ってんの見守ってっからな!」
澤部「それと海を泳いで逃げようなんて考えちゃ駄目だぞー?周りに他の島なんてないから魚のエサになりたいやつはやってみてもいいぞ~」
長濱「……」
脱出は不可能だと念を押され、さらに眉間にしわを寄せる。
澤部「島での行動は自由だから一か所に隠れていてもいいぞ」
上村「!」
半数の少女が目に見えて安心するのも束の間で、澤部は話を続けると再び青ざめることになる。
澤部「しかーし!そんなことをしてたら戦いになんないから、このようなエリアを設けましたー!」
尾関「えりあ?」
地図を見ると外枠の縦にA~F、横に1~6とあり縦横の線が引かれ計36のマスになっていた。
澤部「例えば『D-3、5:00から禁止エリアだぞー』とウォッチに放送します。そしたら急いでそのエリアから脱出してください。そうしないと――そのチョーカーが爆発するぞ!!」
土生「ヴッ!?」
澤部「大会は明後日2月24日0時までの2日間!!その制限時間までに一人にならなかったら、その時は全員のチョーカーが爆発します。つまり”優勝者”はありません」
今泉小林「!!!?」
齋藤(たった、二日……)
時間制限により48時間後には一人ないしは全員が死ぬことを余儀なくされる。
澤部「あっ、重要な事を言い忘れてましたー!いっけねっ!」
鈴本「!!?」
わざとらしく坊主頭を叩いて言う。
とてつもなく嫌な予感がし的中することになる。
澤部「今大会を盛り上げてくれる”転校生”がいまーす!そいつはもう島入りしてるからな。みんな仲良くしてやってくれよお!!」
理佐「うそ……っ」
渡辺(てんこーせー!?)
教室にいるのは二年半苦楽を共にした仲間たちであり、残り二日間の命だろうが殺し合いなどするはずがないと思っていた。
それも転校生がいるとなれば話は別だ。
送り込まれた未知の刺客の存在に絶望を植え付けられる。
澤部「いいか~よーく肝に銘じろよー?君たちは殺し合いをするしかありません!」
澤部の言う通り、生き残りたければ殺し合いをするしかない。
たった一枠しかない生の椅子に座るため、21の命が燃え上がる。
澤部「よーし、わかったなー!それじゃあ一人ずつ五分間隔で教室を出てもらいます」
齋藤「一人五分?」
澤部「廊下で荷物渡すからなー。途中に手洗いもあるから行きたい人は寄っとけよー」
平手「…………」
黒服4人の内3人は廊下へ出て、教室に残った1人は澤部を警護する。
澤部「それじゃまずは~、一番石森虹花!」
石森「!!……ひぐっ!ヒッ、イヒ……」
名前を呼ばれて怯える石森は泣きながらもとりあえず立ち上がる。
メンバーに助けの眼差しを向けるも誰も目を合わせようとしてくれない。
転校生はシラネ
石森「ヒッグ、ヒィ……イヒヒ!」
澤部「ほらぁ!さっさと行けー!!」
澤部は泣きじゃくる石森を追い立てる。
石森「!!ハヒ――」
行かなければ今この場で殺される。
足をガクガク震わせながら歩き教室を出る。
泣き声は遠ざかり、やがて聞こえなくなった。
待機時間は静かなもので瞬きの音すら聞こえてしまいそうなほどだった。
そんな中でたった一人だけ寝息を立てている者がいた。
守屋「すー……」
気絶している守屋の寝息が少女たちの緊張を少しだけ解していた。
石森が出て五分が過ぎ、澤部ははりきって次の人の名を呼ぶ。
澤部「さーどんどんいくぞー!二番今泉佑唯!!」
今泉「うぅぅう……わぁああああぁ……!!」
泣きべそかいた今泉は鼻水を垂らしながら廊下へと追いやられる。
澤部「今泉ィー!ここを出たらいよいよ殺し合いだからなー!がんばれよ~!」
泣き泉の後ろ姿にいつもの番組での口調で恐ろしいエールを送る。
その後もメンバーは時間通り五分置きに呼ばれ分校を後にする。
米谷「…………」
喋ることを許されず待機時間がとてつもなく長く感じ、気分が悪くならない方がおかしい。
後半のメンバーは一時間以上何もせず座っているだけだった。
01:40
澤部「十八番守屋茜!!!!!!」
守屋「んひぁ!?」
今度は自分の名前を大声で呼ばれて目が覚める。
起きると同時に右目に激痛が走る。
守屋「あ痛ぁ!?」
殴打された右の瞼は腫れ上がり、青たんが目を塞いでいた。
理佐「怪我、してるから――」
理佐に小声で教えてもらう。
守屋「えっ!? あっ……」
教室を見渡して、地獄の渦中にいることを思い出す。
守屋(あの時、友香に助けられたんだった。じゃなきゃ今頃私も……)
教室中央にある血溜まりを見ると、亡き同期の死体は片付けられていた。
澤部「守屋ァ!さっさと行けぇええ!!」
守屋「はいッ!!!!!!」
間髪入れずに澤部を上回る声量で返事をする。
澤部「!!!なんだよ……、やる気満々かあ!!?」
守屋と澤部のやり取りを見て残っている3人のメンバーはここに来て初めてわずかに表情を柔らかくする。
縮こまり俯き泣いていた米谷は「フッ」と噤んでいた口を少し開き八重歯を見せる。
目を開いて固まっていた渡辺は少しだけ目を細めて「フフ」と聞こえてきそうな感じで口元を手で抑えていた。
冷静を保っていた理佐は「フー」と鼻息で反応する。
守屋「……」
澤部を静かに睨み付けて、心の中で誓いを立てる。
澤部さんを今すぐにでも本当にぶっ殺したい。
けど、友香が生かしてくれたこの命を無駄にするわけにはいかない。
マネージャーと詩織を殺し、愛するみんなをこんな目に合わせた大人たちを絶対に許さない。
次に会った時があなたの最期だから、どうか待っていて下さい。
澤部の前を通り過ぎ、出る前に残ってる3人を見る。
米谷「?」
守屋(よねみ、梨加ちゃん、理佐。私は殺し合いなんかしないよ)
渡辺理佐「!!」
一瞬だけ優しく微笑みかけ教室を出る。
薄暗い廊下には黒服が荷物を持ち待機していた。
それを強くひったくり外を目指す。
守屋「……ふー」
短くない廊下を歩いきながら考える。
あの子たちが殺し合いなんてするわけがない。
たとえ本当に二日間の命だとしても、自分だけが生き残ろうだなんて誰が思う?
それにきっとねるやよねみが脱出の方法を思いついてくれるはず。
守屋(友香は先に出てったから、みんなを集めて外で待ってるかもしれない!)
教室で助けてくれたキャプテンが外で待っていること期待する。
廊下の後半は足早になり校舎を出る。
守屋「あ」
外には人っ子一人おらず校庭が広がっていた。
街灯は一つもなく、月明かりだけが照らしている。
誰かが待っていてくれると期待していた分、虚しさがこみあげて来る。
追い打ちをかけるように風に吹かれ右目が一層痛む。
守屋「いっつ~~!!」
痛さを感じ、生きていることを実感する。
死んでしまったら何もかもがお終いだ。
死ぬのは後でできる。今は生きよう。
校庭を横切り校門を出ると、小川が流れており石橋がかかっていた。
橋を渡ると舗装はされていないが東西に道が分かれていた。
守屋(右か、左か。それとも――)
正面を見ると山林が広がっていた。
思い出したようにその場で鞄を開けて武器を探す。
守屋(銃だ!二丁ある!!)
支給されたのは同じ型の拳銃二丁だった。
明らかに鈍器や刃物より優れている銃を手にして素直に安心する。
守屋(これさえあれば襲われても大丈夫だ!かかって来いよ転校生!!)
一丁を右手に持ちもう一丁をブレザーの内ポケットに仕舞い、東の道を行く。
・・・・・・
十七番平手友梨奈は守屋より五分前に分校を出て、東の道を先を歩いていた。
平手「なんでこんなことに……。マジでふざけんなよ――」
ただ愚痴をこぼしている女子高生ではなく、支給された日本刀を腰に差している。
いきなり島に連れられてどこへ行けばいいのか分からずとりあえず歩くしかない。
平手(やつさん……、しおり…………)
大好きだったマネージャーと佐藤詩織の死を受けて傷心する。
平手「誰が殺し合いなんてするか」
ここへ来て更に大人たちへ怒りを静かに燃やしていた。
一陣の風が吹き木々が揺れ、同時に山から降りて来た人物に襲われる。
平手「ぎゃはっ!!!」
迫り来る斧に反射的に手を前へ出し、後ろへ倒れる。
平手「え……?痛っ!」
何が起きたか判らなかったが、痛みを感じる所を見る。
制服の袖が裂けて、左腕に浅い裂傷ができていた。
平手「ッ!!」
自分が襲われて、殺されそうになったことを遅れて理解する。
倒れたまま襲ってきた人物に視線を移す。
虹花「フ――!!!フ――!!!」
平手「に、虹花……?」
荒い息遣いで尋常ではない様子の石森がそこにいた。
目は血走り手には斧を持って構えている。
平手「ま、待って!!私は殺し合いなんてしないから!!」
両掌を見せて敵意はないことを示し、落ち着かせようなだめる。
石森「……!!」
理性を完全に失ったわけではなく、平手の声は耳に届きわずかに興奮が冷める。
平手「みんなで脱出しよっ!私たち21人にできないことはないって!!ねっ!!!」
21人の絆を訴えかける。
しかし、石森は俯き斧を持つ手に力が入る。
石森「――んでる……」
平手「え?」
石森「もうすでに詩織は死んでるんだよお!!!」
平手「っ……!」
石森「脱出なんかできるわけねえだろお!!!そんなこと私にだってわかる!!やっぱお前はガキだなあ……!!」
平手「そんなっ……」
石森「私は家に帰らなければならないんだよお!!!」
斧を持ち直して、じり寄って来る石森。
平手「!!!止めて!!!帰りたいのはみんな一緒!!!だからみんなで――」
石森「家でおばあちゃんもハッピーも待ってる!!!だから私が生き残って帰らないといけないんだよおおお!!!!」
平手「はあ!?私だって――」
石森「うるぁああああぁぁぁあああああああ!!!!!」
人の話は聞く耳持たず石森は再び斧を振り下ろす。
平手は鞘に納めたままの日本刀で受け止める。
平手「おいっ……!!!」
思った以上に石森の押す力が強く少しずつ刃が近づく。
平手「お願い……!目を、覚まして――!!」
石森「うっ……があぁああああああああ!!!!」
さらに斧に力が入り、日本刀もろとも平手を吹っ飛ばす。
平手「ぐわぁ!!」
派手に飛ばされ、膝や手を擦り剥く。
日本刀は彼方へ飛び、鞘から抜け生身になる。
平手(マズイ!!刀を――)
倒れてる状態から刀へ向かって飛び跳ねる。
石森「はあぁああああああ!!!」
平手「ごっ!!」
石森に馬乗りにされ、あと一歩のところで刀に手が届かない。
マウントポジションから斧を両手で持ち天に掲げる。
石森「これで――終わりだぁああああああっ!!!!」
巻き割の要領で平手の頭へ斧を振り下ろす。
その時、諦めず伸ばしていた手が日本刀に届き握りしめる。
平手「ぅおおおあああああぁああああああっ!!!!!」
そのまま石森の脇腹に刀を突き刺し、制服に血を滲ませる。
振り下ろされた斧は止まらず首だけを動かし紙一重でてかわした。
石森「う!ん゙? ――ぢぃいぃいいい゙い゙い゙い゙!!!!!!!!!」
人生で一番の腹痛に襲われて、地面に転がる石になる。
石森「ぢょ!!!こマ――ンンンン゙ン゙!!!!!!!!!!!」
これが演技であればハリウッド女優になれるかというくらいの表現力の高さだ。
石森「ヲホハーーー!!!をねっ、がゐぃ!!!だずげでぇえへへっ!!!」
笑ってるのか泣いてるのか判らないが、汗と涙と鼻水と涎で滅茶苦茶になった顔で懇願する。
ただそれを無表情で見降ろす平手。
平手(これはきっと夢なんだ――)
平手友梨奈は大人たちの操り人形になること、つまりこの殺人ゲームに乗ることを決意する。
石森「ゐや゙!!やめ゙――」
丸まった背中から心臓を一刺しする。
石森虹花は血を吐き一瞬だけ痙攣してすぐに動かなくなった。
仲間だった人に埋まっている刀を引き抜き、血の付いた刀を振り払い鞘に納める。
平手「みんな、殺す――」
得物を求め森の中へと消える。
その直後に守屋がやって来た。
月明かりの下、道の先で何かが光ったのが見える。
守屋「何?誰かが荷物でも落としたのかな?」
近づいてみるとそれが何なのか嫌でも判る。
守屋「ニ、虹花ァ!?」
そこには同郷の亡骸が倒れていた。
二度目の仲間を失った死に全身の力が抜け涙が頬を伝う。
守屋(だ、誰が一体こんなことを……。まだ始まったばっかりなのに――、!!!)
急に銃を構えて周りを警戒する。
風で木が揺れる音だけが聞こえ、人の気配はなかった。
守屋(ここに居たら殺される!!逃げなきゃ――でも、どこへ行けばいいの!?)
ぼけっと座り込んでいたら殺してくれと言ってるようなものだと理解し、森へ入り安全な場所を求めて走り出す。
安全な場所を探し求めて、ただ闇雲に暗闇の中を疾走する。
・・・・・・
東の森に一人膝を抱える子どもがいた。
原田「殺し合いなんて、できるわけないよ……」
十六番原田葵は縮こまり見つからないように闇に溶けていた。
敵に見つかりにくい褐色な肌を初めて幸いに思った。
原田「死にたくないよ……。パパ、ママ……」
佐藤の死と自分が置かれている状況に涙せずにはいられなかった。
ふとポケットに重みを感じ、手を入れてみる。
原田「あ!スマホ!!ポッケに入れてたんだった!!!」
祈りを込めてホームボタンを押すと、画面が点いた。
原作なぞるには人数かなり足りないな
原田「やった!これで助けを呼べる!!」
ぴょんぴょん飛び跳ねたい気持ちを抑えすぐに電話を立ち上る。
そして人生で初めて110番に掛ける。
数回のコール音の後、相手に電話がつながった。
??『もしもし』
原田「た、助けてください!!!」
神に感謝し、電話口の男性を神の遣いのように話す。
原田「今、誘拐されてどこかの南の島にいるんです!!お願いです助けてください!!」
詳しくはないが逆探知してもらえれば一発で現在地が判るだろう。
警察が来れば澤部達は捕まって終わりだ。
死ななくていいんだ、殺し合いをしなくてもいいんだ――。
澤部『警察じゃないぞー!原田ァ!残念だったな~~!』
原田「!!?ヒィ――」
聞き覚えのあり過ぎる声に心臓が飛び出そうになる。
反射的にスマホを地面に放り捨て離れる。
澤部『~~~~』
続けて何か話していたようだがすぐに電話が切れた。
急激に心拍数が上がり、体温も上がり発汗する。
震えながら冷静に頭を働かせて考える。
原田(確かに110番にかけた……。なのに澤部さんに繋がった……。つまり――)
本土から遠く離れた大海原の無人島なのに電波が来ている。
おそらく運営側が本土と連絡をとるために、船に電波を送受信するアンテナを積んでいるのか。
たぶんインターネットは繋がらず、電話はどこにかけようと全て船の運営側に繋がってしまう。
原田「…………あ!」
電話のことを考えているとピンと頭の電球が灯った。
原田(脱出……できるかもしれない――!!)
脱出の可能性が無から有に転じ、自分でも信じられない。
その時、茂みをかき分ける音が聞こえる。
原田(!!誰か来る!?)
音はだんだん大きくなり、こちらに近づいているのを感じる。
原田(もし転校生だったらどうしよう――!!)
逃げようとすれば音がする。
銃を持っていて音のしたところを撃たれでもしたら終わりだ。
原田はねずみのように息を殺し草むらに隠れる。
??「ん?」
その人物は地面に落ちてるモノを見つける。
原田(あっ……ダメ――!)
落ちていたのは原田のスマートフォンだった。
??「!……誰か、いるの?」
原田(見つかった――、!!!)
来た人物の顔を見るとに一気に明るくなる。
原田「り……り、理佐ぁ!!」
渡邉「あ……あ!葵っ」
原田は渡邉に飛びつき抱き着く。
原田「りさりさりさーー!!ああああ……!!」
渡邉「よかった……。会いたかった……」
渡邉はスナイパーライフルを捨て、抱きしめ返してくれる。
泣いている原田は渡邉の胸元に顔が当たり違和感を覚える。
原田(!?……なんだろう、この感じ……。何か……大――)
渡邉「どうしたの?」
原田「ううん、何でもない!」
渡邉「ねえ、一緒にいてくれる?」
原田「当たり前じゃん!一緒にいよっ!!」
思い出したかのように早く安心させたくて話をする。
原田「ねえ聞いて聞いて!」
渡邉「何?」
原田「あのね、私この島から脱出の方法を思いついたの!」
渡邉「え……本当に!?」
原田「この方法ならきっと、たぶん……いや、絶対!みんなで脱出できると思う!!」
渡邉「……へえ」
原田「そのためには米とねるの協力が必要なんだけど、いっしょに――へ?」
スナイパーライフルの銃口を向けられる。
意味が分からな過ぎて思考が停止し、自然と涙がこぼれ落ちる。
楽しく話していただけなのに、なんでいきなり行動が豹変したのか。
必至に声を振り絞り、震えながら問いかける。
原田「……り、さ……?ちょっと、どうしたの……っ?」
渡邉「困るんだよね。脱出なんかされると」
原田「!?……は?なんで……?だって ……、え。どおゆうこと……?」
賢い原田は少しずつパズルを揃えていく。
原田(脱出の話をしたとたん……それに、あんなに大きく…………。つまり――)
音を立てて最後の1ピースが埋まり全てが解った。
原田「あっ……ああああぁ……!?こんなっ、うわあぁあああ……!!」
闘うという選択肢はなく、一目散に背を向けて逃げた。
渡邉はその小さい背中に狙いを定め引き金を引く。
原田「っ――」
乾いた音が島に響き、撃たれた原田はうつ伏せに倒れる。
渡邉はボルトアクションで空薬莢を弾き出す。
渡邉「残念だよ。あなたがそんなこと言わなきゃ、いろいろ使えたと思ったのに」
そう言うとその場を後にする。
倒れている原田は足音が完全に遠ざかるのを確認し起きる。
原田「ふぅ……」
小さく息を吐き、背に隠していた秘密兵器を出す。
それは支給された武器の青龍刀の刃であり、金の龍がちょうど弾丸を咥えていた。
長棒と刃を組み立てず別々で持っていたのだ。
背を見せて逃げれば背中を撃ってくるだろうと誘導するために決死の演技した。
原田(うまくいった……。それより、早くみんなにこの事伝えないと――!!!)
立ち上がり、渡邉が消えた反対へ行こうとする。
??「どこ行くの?」
原田「ヱッ!!!!?」
後ろから声をかけられただけで、命がこぼれ落ちそうになった。
全身を悪寒が支配し、生きた心地は彼方へ消え去る。
どんなに泣き叫び喚き漏らしのたうち回り命乞いをしようが、もう数秒後に殺されると悟る。
原田「…………」
ドラマのように都合よく主人公が助けに現れることはない。
間もなく殺される。私は死ぬということを自覚している。
渡邉「最期は大人しく死んで?」
再び銃口を覗かされ、17年間生きてきた人生を振り返る暇も与えられずせめて最後となる一言を探る。
原田「ふわぁ……っ!」
言いかけた言葉を思い留める。
“What made you do that.”
いよいよ日常で使うことが訪れなかった言葉が、今この瞬間に最も適してるんなんて。
でも冥途の土産なんていらない。この人にに望むことはたった一つだけ。
原田「死ネ」
頭の良い原田は、頭の悪い小学生のような悪口を言い放つ。
泣きながらぷく顔で笑っていた。
渡邉は躊躇なく引き金を絞ると、弾は頭に吸い込まれ脳を巻き込みながら貫く。
渡邉「まずは一人」
小さなネズミかと思ったら大きい龍の片鱗を見せた原田葵を葬り、二人目を探しに行く。
・・・・・・
島から離れた船の中で少女たちが見ている景色、つまり視界の映像を見ている男たちがいた。
プレイヤーの右目にカメラ機能を有する”コンタクト”が埋め込まれており、それを通じている。
もちろんこのことは彼女たちには告げらていない。
黒服1「三人目……十六番原田葵、死亡です」
運営側が管理しているPCに一つの知らせが入り、単調に伝える。
澤部はソファーに座りながらコーヒーを飲みくつろいでいる。
澤部「うーん、いいペースだな~。俺はうれしいぞォ!」
嬉しそうに笑みを浮かべる坊主の顔は悪魔のようだった。
残り19人
ご指摘いただきありがとうございます。
ここで一話終わりで全十話です。次から話数ちゃんと入れます。
主役守屋のバトロワ×欅ssです。
色々矛盾とか誤字脱字あるかと思いますので指摘ください!
あらかた書きあがっているので、なるべく早く終わらせたいと思います。
第二話
02:00
長濱「ハッ、ハッ、ハッ……」
十四番長濱ねるは南東の海岸沿いを走っていた。
支給されたサブマシンガンを抱え目的地へ向かう。
息を切らして立ち止まり、左腕に着けたウォッチの地図アプリを見る。
目指している最南端まで100メートルの所まで来ていた。
長濱(もう少し……、もう少し先に――ふーちゃんが待ってるっ!!)
数時間前、分校にて。
澤部『一番石森虹花!』
石森『ヒッ、ヒィ、イヒ!!』
澤部『オルァー!さっさと行けぇー!』
名前の順で一番最初に呼ばれた石森をしっしっと教室から追い出す。
齋藤『ねる』
長濱『!?』
とても小さく誰にも聞こえない声で名前を呼ばれた。
隣の齋藤は前を向いており口元に人差し指を当て”しっ”と口の形で伝える。
それを見て察し、自分も視線を前に戻す。
密談が大人たちにばれたら、ナイフでも飛んできそうな気がした。
細心の注意を払って、齋藤の話に耳を傾ける。
齋藤『ここが本当に島なら、南の端で待ってる』
長濱『!!』
五分おきに分校から出て行かされるので離れ離れになってしまう。
でも齋藤は最南端で落ち合おう約束をしてくれた。
こんな状況なのにそれが嬉しすぎて、笑みを抑えるのが大変だ。
同時に涙も零れ落ち頷いて、それが返事として伝わったのだろう。
澤部に泣いていることは気づかれていたみたいだが、特に何も言われなかった。
長濱「ふっ、うふふ……!!」
ここに来るまでの道中、不安でしかなかったけどその言葉を思い出す度に笑みが零れる。
救われたのは今日だけの話じゃない。
ダンスでも、冠番組でも、ライブでもいつも助けてもらってばかりだ。
一番救われたのは彼女と初めて会ったあの日のことは今でも鮮明に覚えている。
ちょうど二年前の冬、心理アナリスト虹彦先生の回が人生初の番組収録となった。
MCの二人にたくさん話を振ってくれたけど、誰も私を受け入れてはくれなかった。
それもそのはず、自分たちがデビューもしていないのに最終オーディションも受けてない田舎娘がどの面下げてのこのこ入って来たという話だ。
大外の席に座らせられ、せめて隣の子には挨拶しておこうと思い声をかける。
長濱『よ、よろしくお願いします』
米谷『…………』
彼女の耳には届いてるはずなのに、聞こえなかったのかと疑うほど無反応だった。
無視されるのは無理ないかと早速心が折れそうになった。
??『うち、あんたとは仲良くなれへんわ』
長濱『……!』
それは小さな声でかろうじて聞こえた。
再び隣を見ると彼女はこちらを見ていなかった。
内容も含めて幻聴だったのかと信じたかった。
年下から言われたたった一言に上京したことを全力で後悔した。
MC二人が担任の先生のように転校生を溶け込ませようと振ってくれたりして頑張っていただいた。
でもあまりでしゃばりすぎるとより打ち解けにくくなると思って頷く程度にしていたが、『聞ーこーえーてーるぅー?』と音楽の先生のように言われてしまった。
初めての収録が終わり、メンバーがバラバラ楽屋に戻っていく。
その日は一人だけ別の控室だったこともあり一番最後に戻ろうと下を向いて待っていた。
そんなうつむいていた時、気さくに声をかけてくれた人がいた。
齋藤『よっ、新入り!』
長濱『!!さっ、齋藤サン……』
齋藤『お、名前覚えてくれたんだ?』
長濱『え、はい!皆さんのお名前とご出身とお誕生は。あと、血液型も……』
齋藤『やっば!うける~』
笑い飛ばしてくれた。こっちまでつられて笑いたくなる。
厄介者なのにどうして話しかけてくれたのだろう。
長濱『あの、齋藤サンはどうして……』
齋藤『てかさ~さん付けとか敬語はなしな!チームメイトなんだから。まあみんな私のことあだ名で呼ぶけど』
長濱『!』
聞こうと思っていたことを全部答えてくれた。
まるで今の心境を解ってくれているようだ。
安心して思い切って初めてメンバーをあだ名で呼んでみる。
長濱『じゃあ……ふーちゃん!』
齋藤『おう。私は名前で呼ばせてもらうけどね~。これからよろしく、ねる!』
長濱『よろしくお願いしますっ!……あっ!』
齋藤『敬語なしっつったじゃ~ん!』
つっこまれ二人で笑い合い、心の氷が解けた。
あの日、冬に優しく咲く一凛の真っ白な花を見た。
彼女は太陽のように眩しくて温かかった。
齋藤のおかげで徐々にメンバーと仲良くなっていき、最後にはあの子とも打ち解けれた。
だからあの出会いは死ぬまで忘れることはないだろう。
何がバトルロワイヤルだ、何が「殺し合いをしなさい」だ。
こんな島から一緒に逃げ出してやる。
長濱は最南端に到着した。
浜辺に岩場が数々あり、その中に人影を見つける。
長濱「ふーちゃん!!」
八番齋藤冬優花は高い岩場の上に座っていた。
齋藤「ねる」
名前を呼ばれて単調に答える。
長濱「ふーちゃーん!!!」
再会についテンションが高まり叫びながら駆け寄る。
足元が海に浸かり、靴下が濡れることなど気にせず進む。
齋藤「気を付けて。そこはよく滑る」
長濱「!!!……えっ」
足を止めると、言われた通り転びはしなかったが滑った。
嫌な予感がし、得体の知れない足元を恐ろしくて見ることができなかった。
齋藤の鉄仮面の白い肌が月明かりに照らされている。
長濱「ふーちゃん、澤部さんたちと戦うんだよね?しーちゃんの仇討つんだよね!」
齋藤「…………」
無表情のまま空を見つめる齋藤。
肯定も否定もせず、別の事を考えているようだ。
齋藤「ねる。私はどっちでもよかったんだ」
長濱「どっちでもって……、えっ?…………何が?」
齋藤「私は十円玉を投げた。表が出たらねるの言う通り澤部さんたちと戦う」
波打ち際に何か落ちており、それに月光が反射する。
件に出た投げた十円玉だった。
齋藤「そして、裏が出たら――」
長濱「……!!」
表なら澤部たち運営側と戦い脱出する。裏ならその逆を意味する。
答えを聞く前に平等院鳳凰堂がはっきりと見えた。
齋藤「このゲームに乗る」
そう言って、隠していた火縄銃を長濱へ向ける。
長濱「うっ――」
一瞬にして顔が歪み涙して叫びながらサブマシンガンを最愛の人へ向けてしまう。
長濱「うおあああああああああああああああああああ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」
大好きな人の顔を、目を見る。
殺されると死を覚悟しながらその引き金を絞ることはなかった。
長濱「あ・あ・あ――……?」
目が回り気づくのに時間がかかった。
齋藤が向けていたのは火縄銃の持ち手側だった。
齋藤「表だよ!」
長濱「お、も、て……?」
硬貨の裏は大きく金額が書いてある方で、歴史的建造物が上を向いている。
緊張と焦りで裏と表を逆に勘違いしてしまった。
齋藤「澤部と戦いたいからさ、この銃の撃ち方教えてほしんだけど!」
長濱「…………。ぶ~ぢゃ~ん!!!」
齋藤「ちょっと~!ブタみたいじゃんその呼び方~!」
長濱「あっははーん!!!」
抱き着く長濱を優しく受け止める。
泣き止むまでの間、愛の抱擁を続けた。
長濱「でも人が悪いよ!」
齋藤「ごめん。悪いけど試した」
長濱「タメシタ?……え、ねるを?」
齋藤「こんな状況だからさ、さっきねるに撃たれて……それで終わりでもよかった」
長濱「へ……?それって――」
齋藤「私が賭けたのはコイントスなんかじゃなくて、ねるだったんだ」
長濱「なっ、なんてこと……!その賭けは成立せんよ!だって表しか出んから!!」
齋藤「信じてた。だから、絶対に生きてこの島を出るよ!」
長濱「うん!!」
改めて固い握手を交わす。
そのまま手をつなぎ、二人は森の中へ入る。
・・・・・・
04:00
島の東側に港があり、近くの浜辺に一人佇む少女がいた。
尾関「はあ……」
四番尾関梨香は海を向かってため息をつき体育座りをしていた。
視線の先には澤部達のいる船があった。船は沖から200メートルは離れている。
支給された武器はマークⅡ手榴弾を2つ。
パイナップルのような形状で知られる有名な手榴弾である。
尾関(パイナップルみたいだな。これがなーこちゃんに支給されてたら――)
長沢菜々香に支給されていたら、間違えて口にしてしまうかもしれないと危惧する。
素人の尾関でさえ惨事になることが目に見え、思わず固唾を飲む。
尾関「詩織…………」
分校が禁止エリアになり、澤部達が船へ戻って行くのを港で待ち伏せていた。
しかし暗くて気が付かなかったが校庭に停めてあったヘリで戻り実行できなかったのだ。
欅を愛する気持ちが三番目くらいに強い尾関は大人たちを倒すことを決意する。
尾関「私が、コレで、皆を、守るんだ……!」
鞄を置き靴と靴下を脱ぎ捨て、両手に一つずつ手榴弾を持つ。
制服は着たままで、波打ち際に近寄る。寄せ波が尾関の素足を撫ぜる。
尾関「ぅひゃあっ!?」
尾関独特な動き”尾関スタイル”で波辺へ飛び退く。
南に位置する島だが、二月の夜の海は冷たくて当たり前だ。
尾関(づべだずぎる゙!?…………いや、皆のために!死んじゃったマネ―ジャーと詩織のために――)
気合を入れて叫びでたらめなフォームで走り出し、派手に海へ入水した。
尾関「あぁああああああぁああ……!!!あ。あ…………、あ――」
勢いの余り既に股までつかり、あまりの冷たさにそこから一歩も動けなかった。
目が開けられないほどの寒冷に襲われ、記憶は過去に飛ぶ。
デビューシングル『サイレントマジョリティー』は真冬の工事現場での撮影だった。
一年で一番の寒波が押し寄せていた夜は、文字通り一年で一番寒かった。
撮影を見守ってくれていた女の子が懐炉をくれた。そのメンバーの名は。
尾関「ねる……!!」
尾関の意識は帰って来た。
尾関(サイマジョだけじゃない!セカアイの北海道も、不協和音の○○も、めちゃくちゃ寒かった!)
欅あるあるであるMV撮影は決まって寒く、闘いの日々を思い出す。
尾関(寒くて凍えて辛かったけど、私たちは21人でどんな時も乗り越えてきたじゃないかっ!!!)
仲間のおかげで心が温まり、海の冷たさに慣れ逆に暖かくなってきた。
メンバーたちに背中を押された気がして一歩前に進み、少しずつ船へ近づく。
腰、腹、胸、肩、そして首にまで来ていよいよ足が届かなくなる所まで来た。
島へ振り返り、メンバーの顔を思い浮かべる。
もう二度と帰って来れないかもしれないと覚悟を決めて、泳ぎ始める。
平泳ぎでも犬かきでもない。
完全に世界に一つだけの泳法、名付けるまでもなく”尾関スタイル”で少しずつ浜から離れる。
尾関(行ける!!!これでみんなを助けることができる。このまま……ッ――!?)
波に足を取られたのか、あるいは足をつったのか様子がおかしい。
端から見れば溺れているかのような泳ぎ方は、事実溺れないように暴れているだけで波に流されていた。
つまり、ただ単に溺れていた。
尾関「ぼごごぽっ!?」
身体が沈み、海水を飲み込み器官に入ると呼吸が乱れる。
尾関「ゴッホ!!!……ごぷっ!!?」
少量の海水を吐き出すと、反動で大きく息を吸うと大量の海水を飲み込んでしまう。
着ていた衣服のせいでうまく動けず、そのまま身体は水面下に沈んだ。
尾関(おぼ、れる……!!!な、ん、で!??……せめて、これを――)
尾関スタイルに拍車がかかり、奇跡的に再浮上することができた。
懐から秘密兵器である手榴弾を取り出す。
まだ豆粒のように遠くにある船に向かって振りかぶる。
尾関(いっけぇええええええええええええ!!!!!!)
頭の上で安全栓を外し、船めがけて投擲した。
パッシャンとやけに近くで何かが着水する音が聞こえた。
尾関「……えっ?」
その何かは言うまでもなく、すぐ前に浮いていた。
遠くに投げたと思ったモノは手前の波に叩きつけただけだった。
手榴弾は波に乗って自分の方へ寄って来る。
尾関「ぎ……ぃゃあぁああああああぁああああぁあ!!!!ぁあばばばぼばばばっは――………!!!!!!!!!」
死の恐怖から生み出される奇想天外な動きをしながら手榴弾から離れようとするもその場から全く進めない。むしろ沈んでいる。
なんと表現するのが適しているのかあまりの気持ちの悪い動きに拍車がかかる。
尾関スタイルが最高潮に達し、時間の壁を突破して突如彼女の体は発光する。
尾関「あ゙っ」
次の瞬間に手榴弾は連鎖爆発し、派手に水しぶきを上げる。
四肢は吹き飛び、霧とともに舞い細かくなった肉片は海に浮かぶ。
死ぬほどたどり着きたかった船に死して爆発音だけが届いていた。
世界で一番の輝きを放った尾関梨香は夜の星となった。
・・・・・・
05:30
守屋は南の山中を歩いていた。
殴打された右目は川の水で冷やし、気休め程度にYシャツの袖を破いて濡らして巻いていた。
もう間もなく日が昇りそうだが、森の中は薄暗い。
夜は暗いから人を見つけにくいが、朝になると逆に見つかりやすくなる。
行動することは命を危険にさらすということ。
それでもメンバーに会いたい気持ちが彼女の足を動かす。
手には支給された銃を持ち、草をかき分けて進む。
するとカサッと自分が立てていない音が聞こえる。
守屋「!?」
左へ振り向きつつ銃を向ける。
??「!」
そこにはこちらに銃を向けている人物がいた。
互いに銃を向け合い、硬直状態が続く。
守屋(こ、殺される……!!!!)
辺りは一段と薄暗く、相手の顔は陰になり見えない。
わずか一秒がとてつもなく長く感じ、時間に酔いそうになる。
カササッと今度は右方向から聞こえ、視線だけを移すと同じように銃を向けて来る人物が現れた。
右目は死角になっており気づくのに遅れた。
守屋(二人――!?!?ヤバい、どうする、いや、死――)
守屋はゆっくりと懐からもう一丁の銃を取り出し、もう一人に向ける。
??「っ!!」
三人は銃を人に向けると同時に、自分にも向けられていた。
トライアングルフォーメーションで三人とも銃を向け合っている。
引き金を引けば、反動で相手に撃たれる恐れがある。
一人でも動けば三人とも全滅する状態に陥っていた。
緊張で声を発することもできない。心臓が高鳴り眩暈を覚える。
守屋(もう、ダメ――!!!)
その時太陽が昇り、朝日が三人の顔を照らす。
守屋「え?」
齋藤「う!」
長濱「あ!」
右手には齋藤、左手には長濱が銃を向けていた。
二人は守屋の顔を視認すると銃を下ろす。
長濱「茜ちゃんっ!!!」
齋藤「茜ぇええええええっへへーっ!!」
守屋「ねるぅ――っ!!冬優花ぁああ!!!」
三人とも銃を放り捨て、涙を流して熱い抱擁を交わす。
涙で崩れた顔を摺り寄せ、互いの涙が交錯する。
守屋「もう死んだかと思ったわ!!」
齋藤「いやーまた会えてよかったー!」
長濱「汗出た~~!!」
脳漿をまき散らさず、汗だけで済んでよかったと安堵する。
守屋「二人は一緒にいたんだ?」
齋藤「まあね。茜は誰かと会ったりした?」
守屋「!!あ……、私――」
長濱「……?」
言いかけたところで時刻は六時になり支給されたウォッチが自動で画面が点く。
三人「!?」
その小さい画面に今は担任の澤部が映し出される。
澤部『おはようございまーす!さわやかさわべ~俺だよ!!』
守屋「さ、澤部っ!?」
澤部『午前六時になりましたので、初回の放送をするぞー!』
澤部『それじゃこれまでに死亡したメンバーの名前を言うぞー!一番石森虹花』
齋藤「に、虹花……っ!?」
長濱「虹花ちゃ…………」
澤部『十六番原田葵、四番尾関梨香、以上!』
守屋「はぇ!?葵と――」
齋藤「尾関もぉ!?」
守屋と齋藤は三人の故人を悲しみ涙を流す。
長濱も眉間にしわを寄せ、険しい顔になっていた。
長濱「もうこんなに……?」
既に分校で死んだ佐藤を除き、短時間で三人が死亡した。
いくらなんでも多すぎる人数に疑問を抱かざるを得ない。
澤部『次は禁止エリアを言います。7時からB-5、9時からC-2、11時からE-3。それじゃがんばれよぉ!!』
ウォッチの映像が終わり、ホーム画面に戻った。
長濱「ここは入っとらんけん、しばらくは動かなくてもよかね」
齋藤「まさか、転校生のしわざか?」
長濱「……茜ちゃん。さっき言いかけてたよね」
齋藤「そうだ!誰かに会ったのか?」
守屋「あのね……私、虹花に会ったの」
齋藤「!!!会ったって、生きてたのか!?」
守屋「……ううん。すでに死んでいた」
長濱「辛いだろうけど、詳しく話してくれない?」
守屋「うん……。分校から出て東の道を歩いてたら誰かが倒れてて……それが虹花だった」
齋藤「私もそこ歩いて来たけど、虹花はいなかった。ねるは?」
長濱「ねるは見つからなうように山の中を歩いてたと。だから見てない」
齋藤「てことは、私の後からから茜の前までの誰かが虹花をやったってことか!?」
三人は名前の順を思い出し、既に死亡した佐藤と原田を除くメンバーを思い浮かべていた。
志田、菅井、鈴本、長沢、土生、平手の誰かが石森殺しの容疑者となる。
長濱「……必ずしもその限りではないけどね。紛れ込んどる転校生って線も濃厚やし」
守屋「転校生――」
長濱は島に来てからのわずかな情報を思い起こす。
長濱「夜のうちに二発の銃声、同じ銃声が五発くらい聞こえたよね。おそらく、それで葵ちゃんがやられたんだと思う。それと、明るくなる前に爆発音が聞こえた。あれはオリカちゃんやったとしたら……最悪、転校生とは別の誰かがやったってことになる」
守屋「……え。どういうこと!?」
長濱「虹花は刺されて殺された。葵ちゃんは撃たれて殺されたとしたら犯人は同一人物じゃないってこと」
齋藤「このゲームに乗ってるのは転校生だけじゃあない!?」
守屋「まさか……、そんなことって――」
長濱「いずれにしても、やる気になっとる子はおるからしれんから注意して……!」
しばらくの沈黙が続く中、このままというわけにはいかず話を始める。
長濱「茜ちゃんは、この状況をどうしたい?」
守屋「え、”どう”って…………いや、うん。みんなでなんとかして島から脱出したいよ!」
齋藤「もちろん私たちだって脱出したい。でも……、ね」
長濱「そう。このチョーカーがある限り島に縛りつけられると」
守屋「なら……助けを呼ぶ、とか?」
齋藤「助け?」
守屋「えっと、海岸沿いで待機してて船か飛行機が来たら発砲すればこっちに気づいてくれるかも!」
長濱「澤部さんが言っとったけど周囲になんもない地図にもないこの島の近くを通り過ぎるとは思わん。しかも今日明日で」
齋藤「だよな……」
長濱「こんなことが過去三回も行われてきたのに表沙汰になってないことから助けは期待できないと思う」
守屋「じゃあどうすればいいのぉ……」
八方塞になり、早くもお通夜ムードが漂う。
長濱は眉間にしわを寄せて長考し静かに口を開く。
長濱「一つだけ」
守屋「?”一つ”って……、えっ!?」
齋藤「ねる……、まさか――」
話の流れからして、何が”一つ”かなんて一つしかない。
長濱「かなりのリスクを伴うけど、脱出の方法が一つだけある」
守屋「ホントにぃ!?」
齋藤「マジかッ!?」
長濱「大きな声を出さないで。殺されたいの?」
齋藤「うっ……ぷ」
守屋「ゴメンナサイ……」
ヒートアップした二人を一瞬で落ち着かせ小声で話す。
長濱「でも、それには2つばかし条件があると」
守屋「ジョウケン?」
齋藤「何だよ、それは?」
長濱が話を進めようとしたとき、遠くから声が聞こえて来た。
??『みんな――殺し合いは止めて――!!!!!』
それは南の山の上から聞こえ、島のおよそ半分に響き渡る。
ただの地声ではなく、機械を介したような音を発していた。
齋藤「なんだ!?」
長濱「え…………」
守屋「こ、この声は……!!」
今泉『みんなで力を合わせて脱出しよ――!!』
齋藤「今泉ぃっ!?」
小林『ここに集まって!!!私たちは仲間だよ!!!』
守屋「由依もいる!!」
齋藤「やった!!これでみんな助かる!!」
長濱「いやいや……、あんな目立つことしとったら殺されちゃう……!」
守屋「え!?……ああ!!あ、あ、あの二人を助けなきゃあ!!!」
長濱「待ってッ!」
守屋が駆け出そうとするのを、長濱が止める。
九州男児の娘の力をもって、守屋の腕をつかむ。
守屋「痛っ!!何するの!?二人が危ない!!」
長濱「落ち着いて聞いて。条件がある、って言ったよね……」
守屋「それが今なんの関係が――」
長濱「その一つが私たちが一番最後まで生き残ること!」
守屋「なっ、何それぇ!?あんたの脱出方法って皆の死と引き換えにして、自分たちだけ生き残るってことぉ!?」
長濱「そうは言っとらん!本当に信用できる仲間が増えるんなら構わんけん、私たちのグループ以外のみんな死ななきゃってこと!!」
守屋「そっ、それならあの子たちは仲間じゃないの!?ずみ子と由依が危険を承知で呼び掛けてるんだよお!?」
長濱「山頂までどれほど距離があると思うと!?のこのこあそこに行ったところで標的が増えるだけ!!」
齋藤「ねる……」
守屋「はぁ?じゃあ見捨てるって言うのぉ!」
長濱「そうも言っとらん。あの子たちを逃がすために、私たちの生存確率を下げる……少しだけ」
守屋「ど、どうやって――?」
長濱は齋藤へ振り返り、あるお願いをする。
長濱「ふーちゃん、撃って」
齋藤「……は?」
齋藤は長濱の指示のもと一仕事行う。
何やら火縄銃を取って、いろいろやっている。
長濱「そう、次に火をつけてから……引き金を引いて!」
齋藤「うらッ!!」
火縄銃を空へ向けて放つ。
轟音は島全体を包むと、山頂の二人の声が止んだ。
長濱「これで狙われてると思ったはず。早くどこかに姿を隠して……!」
守屋「そっか!ねる天才!!」
齋藤「頼む……!」
怖気づき逃げることを望むが、逆により強い声が聞こえて来た。
今泉『お願いだからみんな武器を捨ててここに来て――!!!!!』
小林『みんなで生き残ろうッ!!』
齋藤「っ。今泉、由依……!!もう一発!」
長濱「ダメ!今の一発だけでも私たちの位置に気づいた子がおるかもしれん。これ以上は危険……!」
守屋「ど、どうすれば……!!!」
自分はこんなところで指を食えて見ている事しかできないのかと無力さを痛感する。
齋藤「ねる!!やっぱ助けに行くしか――」
長濱「生き残りたくないの!?」
齋藤「生きたいよ!でも、仲間の死を見捨ててまで行き残りたいとは思わない!!」
長濱のメンバーを想う気持ちは本物だ。そんな彼女を見て改めて思う。
長濱「ふーちゃん。好きだよ」
齋藤「なっ!?んだよ……、こんな時に……?」
突然の告白にたじろぐ。
長濱「こんな時だからだよ」
日常ではたまに好きだの何だの言われていたが、真に迫るものがあった。
齋藤「ねる――。私もだよ」
長濱「だから、お願い!行かないでほしい!!」
齋藤「…………っ」
守屋「ねる……、冬優花……!!」
長濱は齋藤を死んでも行かせたくはない。
守屋が行こうとすれば必然的に齋藤もついて行くだろう。
三人で行くには目立ちすぎる。
道中敵に見つかりマシンガンを持っていたとしたら皆殺しにしてくださいと言っているようなものだ。
その時、島に優しい歌声が響く。
〽君は知ってるかい?渋谷川って…
名前を聞いても
今泉『ピンと来ないだろう』
小林『ピンと来ないだろう~』
長濱「!!」
齋藤「マジかよ……」
守屋「ゆいちゃんず……!!」
デビューシングルのカップリング曲にしてグループ初のユニット曲『渋谷川』が流れる。
お披露目会で誕生したユニットで誰からも愛され、彼女たちの歌声はみんなの癒しだった。
妹のような年上の今泉と、姉のような年下の小林は最強コンビとなった。
〽忘れられたように 都会で隅で それでも確かに せせらぎ続ける
守屋「くぅ……!!!」
ゆいちゃんずの二人との楽しい思い出が脳裏をよぎる。
〽まるで僕の 君への――……
突然、ガッシャンと拡声器を落としたような音が響き歌唱が停止する。
守屋「!!」
齋藤「歌が――」
長濱「止まった……」
再び声がすることはなく、おそらく何かがあったに違いない。
齋藤はいてもたってもいられず向かおうとする。
長濱「ふーちゃん!もう間に合わん!!」
長濱は本気で抱き着き留まらせる。
行っても無駄だと諦めさせようとする。
齋藤「ネル……!」
長濱「……」
長濱は齋藤を抱きしめながら守屋に目で訴える。
守屋「……!!」
分かってるよ。あんたが冬優花を守りたい気持ち。
あそこで命の危険にさらされてる二人と冬優花の命を秤にかけても断然冬優花の方が重く大事なんだよね。
でも、私は――。
守屋は懐から銃を一丁取り出す。
守屋「北の山で待ってて。私も後で行くから」
齋藤「茜……!!」
長濱「茜ちゃんっ!」
守屋「私は諦めない。あんなに頑張ってる二人を見捨てることなんてできない……!」
齋藤「じゃあ、私も――」
守屋「一人で行く!私の足ならあそこまで一瞬で行ける!二人を連れて来るから、先に行ってて待って」
長濱「茜ちゃん!待っとうよ!」
齋藤「絶対来いよ!茜!!」
守屋「行って来る」
二人に見送られ、ゆいちゃんずが呼びかけていた南の山頂を目指して走り出す。
残り18人
第三話
09:00
南の山の山頂で刃物を振り回す少女たちがいた。
小林「らァ!!」
七番小林由依の剣と敵の刀がぶつかり合う。
今泉「ぁ、ゎゎゎ……!!!」
傍らで二番今泉佑唯は二人の死闘を腰を抜かして見ている。
メガホンを持つ手は震え何もできずにいた。
殺し合いを止めようと言い出したことを後悔していた。
敵の切り返しの一閃にキューティクルな横髪と頬を斬られた。
小林「チッ」
一旦距離を置き、体勢を立て直す。
会話を試みるため敵の名前を呼ぶ。
小林「平手友梨奈……!」
ゆいちゃんずは平手と対峙する。
今泉は声を振り絞り、襲ってきた平手に問う。
今泉「平手!?なんで!!どうして??意味わかんないよ!!」
平手「……」
驚く二人に対して、平手は前髪が顔を覆い表情が窺えない。
一陣の風が吹き、髪の隙間から恐ろしい三白眼が一瞬だけ見えた。
小林「くっ……!」
今泉「うっ……、あぁあああぁあぁぁ……!」
得体の知れない感覚が全身を支配する。
今泉は奥歯を鳴らし、体を震わせながら涙を零す。
これが死の恐怖だと感じ取った小林は最悪の事態を考える。
小林「てめぇ……」
こいつの様子は普通じゃない。
いつもの異常さとは全く違う異常さ。一周回って普通?なわけあるか。
全てを超越している。アイドルも、女の子も、人も。
ゲームが始まってから虹花、葵、梨香の三人が死んでいる。
いくらなんでも全員が転校生の仕業とは考えられない。
他の誰かがこのゲームに乗って殺したんだ。
小林「こいつしかいない……!」
誰が殺されたかは判らないが、すでに少なくとも一人殺していると確信する。
今泉「ご、ごべん……!わ、わだじが、間違っでだ……っ!!」
鼻水を垂らし泣きながら自分の過ちを謝る。
己の判断によって唯一無二の相棒が命の危険にさらされている。
呼び掛けをしようと言った自分を呪い、後悔の念が次々と押し寄せる。
後悔の果てにたどり着くのが先か、殺されて後悔しようにもできなくなるのが先か。
小林「逃げて」
今泉「――ぅえ!?……ぁん?!」
その言葉は自分だけを逃がそうとしてくれていることを意味する。
今泉「ゆ、由依ちゃんはどうするの!?こ、コロされぢゃうよほ!!」
小林「こいつは私が足止めしとく。だから、先に逃げて」
今泉「い、いやらよ……!!あたしも……戦ゔ!!」
小林はうつむき、しばしの逡巡の後舌打ちをする。
小林「あああああああああ!!!!!!」
今泉「ひぇ!?」
苛立ちの咆哮を敵ではなく今泉にぶつける。
小林「お前ってやつは、”ここでも”わがままばっかだなあ!!!」
今泉「へっ……………? ゆい、ちゃん――?」
初めて年下の相棒から怒られ、呆気にとられる。
怒りの顔をつくり年上の相棒に続けて言い放つ。
小林「邪魔なんだよ!足手まといなんだよ!!鬱陶しいんだよ!!!」
今泉「はへ……!?」
人生で面と向かってこれほどまでに全否定されたことはない。
小林「それとも何?私を殺す気?」
今泉「い――いっしょに逃げよっ!!!」
小林「お前バカか!?グズでノロマで短足なんだからすぐに追いつかれるに決まってンだろ!!」
今泉「で、でも……!」
いつまでもグズる妹に、姉は本気の一言を放つ。
小林「――殺すぞ」
今泉「ッ!!!」
いつも笑って元気で隣で歌っていた相方がものすごい殺意を向けている。
平手はいつまでも姉妹のやりとりを黙って見ているわけではなく殺しに来る。
小林「さっさと失せろこのブス!!」
今泉「う、わぁああぁあああゎわわわあああぁあッ!!!!!」
汗と涙と鼻水だらけの今泉は怖気づいて立てない。
平手が走って距離をつめ、そのまま二人同時に斬りかかる。
小林「おらァ!!」
今泉「うえっ!?」
小林は今泉の肩を手加減なく蹴り飛ばし、小さな体は一瞬宙を舞う。
飛ばされた今泉は山の傾斜で数メートル転がりながら下山し、何回転目かでうまく立ち上がっていた。
今泉「いたたっ……、あっ!!!」
振り返ると小林と平手は刀を交わせていた。
その最中に一瞬だけ目が合う。
今泉「!!由依ちゃ――」
小林はすぐに戦いに戻り、平手とやり合う。
意を決し逃げるため前を向いたとき背中から聞こえる。
小林「またね」
その言葉を聞き、さらに顔をぐちゃぐちゃにして振り返らずに山を下りる。
小林「おい平手。お前、誰を殺った?莉菜か、尾関か。それとも……虹花か」
平手「……」
問いは確実に耳に届いているが、全く心には届いていなかった。
心ここにあらず、夢でも見ているような目だ。
小林「何と言えよ。反抗期か?クソガキ」
悪口に反応したのか返事代わりに刀を突いて来て、サーベルで受け流す。
小林(話し合いは無理か。はなっから期待はしてなかったけど)
背を見せれば斬られる。逃げることができない。
戦う以外の選択肢などない。殺し合いの負けは死を意味する。
常に何歩も先にいたセンター平手に勝つことができるのか。
小林「負けたくない……」
日常では諦めていた。絶対に敵わないと分かっていたから。
初めて平手に勝ちたいと願い、埼玉の血が燃える。
先手でヤンキー顔負けのメンチを切る。
加えて可愛さで破壊力のある顔面を攻撃力にする。
平手「!!」
あまりの迫力にほんのわずかに退く。
その隙を見逃さずサーベルで斬りかかる。
三連撃で剣を振りかざすが、刀で受けられるも初めて平手を押していた。
小林「うぉおおおッ!!!」
咆哮の一撃は大きく上から振り下ろす。
仕留めたと思った斬撃は紙一重でかわされた。
小林「何!?」
カウンターの逆手斬り返しに襲われる。
攻撃をかわされた瞬間反撃を察知していたが、回避しぎれず可愛い顔を斬られた。
小林「ぐっ……!!がぁ!!!」
斬られたのは頬で、頬骨にまで達する裂傷から血が溢れ激痛が襲う。
それでも退かずすぐにWカウンターの逆手斬撃を繰り出す。
平手「!?」
追撃しようとしていた平手は斬撃を防げず頬を斬られる。
傷は浅かったが数歩退かせる。
小林「ハァ、ハァ……!!」
裂傷からの大出血と激痛に死を意識し、鼓動とともに息が上がる。
それを悟られまいとヤンキー口調で言う。
小林「調子こいてんじゃねえぞ!!!」
勝負に出て、シュシュと剣を次々と突き始める。
小林「オラオラオラオラオラオラァ!!!!」
平手「!」
そのまま平手へ連続ラッシュを繰り出す。
平手は回避を試みるが、剣はあちこちの制服を破き皮膚を割く。
息つく暇なく第二弾の連続ラッシュに襲われる。
小林「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!!!」
――これで決める、終わらせる。こいつに勝って佑唯ちゃんとまた……っ。
小林は異変に気付き始めた。
突然空を突いているかのように手応えがなくなったのだ。
平手は剣筋を完全に見極め始め、踊りながら順応していた。
小林(あ、当たらない!?――クソ!!)
不安をオラつきで誤魔化しラッシュを続ける。
突いている限り反撃は来ないと思い狂ったように突きまくる。
小林「オラオラオ――ぐリゅィ!?」
変な声が出るほどの激痛が走り腕を引っ込めると地面に剣が落ちた。
小林「?!……あぁん?」
それもそのはず前腕の腹を半分ほど斬られ、だらんと曲がってはいけない方向に垂れていた。
骨折どころか尺骨を断ち切られ、もう一本の橈骨で繋がっている状態だ。
血は重力に反して止めどなく噴き出る。
平手はとどめを刺しに首を斬りかかる。
小林「!!!オ――ラァ!!!」
平手「!」
小林は左の拳を平手の側頭部に叩き込む。
そのまま吹き飛んで、山を転がっていった。
小林「ハァ、ハァ、……フッ!」
飛んでいった平手と反対方向へ武器も拾わずに走り出す。
逃げずにはいられなかった。待ち受けているのは負けしかない。
斬られた腕を抑えながら駆け、山を下り森の中へ入る。
小林(ムリだ……!!勝てるわけがない!!)
やはりアイツは天才だ。
闘いながらどんどん強くなっていった。
勝とうと思ってた私がバカだった。
でも、足だけならアイツよりは速い。
50メートル程走ったところで追って来ていないか振り返る。
小林(!!!!――ヒ、平手ェ!!!?)
すぐ近くまで平手が迫って来ており、心臓が痛いほどに跳ねる。
ターミネーターのような規則正しい走り方で持っている日本刀が光る。
追いつかれたが最期、文字通り必死に逃げる。
小林はひしゃげている腕を振れない分、ベストな状態ではなくその差は徐々に詰められる。
そして、平手の振り下ろす刀が小林の背中を捉える。
小林「かっ……!」
背中を斬られ、勢いよく前方へ3メートル程滑り倒れる。
裂傷は深く、鼓動とともに鮮血が流れる。
平手はとどめを刺そうと歩み寄ろうとする。
平手「……」
倒れている瀕死の小林から獣のような殺意を感じ、それ以上近づけなかった。
すぐに死ぬと分かったのでとどめは刺さず刀を鞘に納める。
小林を無表情のままじっと見つめて何を思うのか。
すぐに今泉の消えた方角へ立ち去った。
小林「う……ん!」
死の痛みに襲われながら、まな板で開腹された魚のようにまだ生きていた。
凡人である小林は天才平手に敵わなかった。
小林(死ぬ……。やっぱ……平手には、勝てなかった――)
もう長くないと悟り、歩んできた短い人生を振り返る。
埼玉で生まれ育ち、何不自由なく平凡に過ごしてきた。
高校に入ったら何かが変わるんじゃないかと期待していた。
勉強も部活も友だち人間関係もそつなくこなした。
でも思い描いたドラマやアニメのようなものはなかった。
何もないまま一学期が終わろうとしていた時に新しいアイドルグループのオーディションがあると聞いた。
アイドルに偏見を持っていた。自分がカワイイと思ってる子がぶりっ子してヲタクに媚びを売る仕事だと思っていた。
でも乃木坂46を見ている内にそんな偏見はなくなり、退屈を紛らわせてくれるんじゃないかと確信していた。
待っているだけじゃダメなんだ、自分から動かなければ。
風に吹かれても何も始まらない。
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コメント
名無しのまとめラボ 2018年9月2日 12:38 ID: c4Njg1MDM
私は何を読まされてるんだ
名無しのまとめラボ 2018年9月2日 13:13 ID: g5MTI1NTA
おばけ屋敷の企画を思いだしてみると、ほとんどの子が、
泣いて何もできないと思います。
平手君は、そんなに冷酷でも勇敢でも無いでしょう。
完全に、徳誰のキャラ設定でしたね。
もう少し、リアルな方が面白いと思います。
名無しのまとめラボ 2018年9月2日 13:17 ID: kwMjkwNzU
石森可哀想だけどワロタ
名無しのまとめラボ 2018年9月2日 14:20 ID: k3MzAzMzM
これは読み応えがあるので、メンバーに実際にやってもらうべきですね
名無しのまとめラボ 2018年9月2日 15:26 ID: Q2MjYyMTA
つっちーを信じて待つ自分がいる
続きを楽しみにしてます
名無しのまとめラボ 2018年9月4日 0:36 ID: k0MzkzMDY
なにこれ…
名無しのまとめラボ 2018年9月4日 22:54 ID: k4MDUyMjA
石森がちょくちょくチョコマンって言ってるのが…ねぇ
名無しのまとめラボ 2018年9月30日 20:30 ID: EzNTkxMDI
くだらないけど全部読んじゃったじゃねーかよ!
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