土生「この……っ、一体何人殺したの!?」
渡邉「教えてあげようか。誰がどうやって、何て言い残して死んでいったのか……」
土生「っ!!やめて!!」
土生が目を背けた瞬間を見逃さなかった。
倒された時に掴んでいた一握の土を顔めがけて投げかける。
渡邉「じゃあねっ」
土生「ああ゙っ!?」
幾ばくかの土が目に入り、視界を奪われる。
その隙に渡邉は全速力で逃げ出した。
土生「待ってッ!!」
涙目になりながらも片目を薄目で開け、遠ざかる渡邉の後ろ姿が見える。
照準が定まるも次の瞬間には木に阻まれ見失う。
前編→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【前編】
中編→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【中編】
中編2→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【中編・2】
土生「クソ……!!」
探知機でも射程圏外に逃げられたこと知る。
土生「ああああなんで撃たなかった!?あんなやつを放っておいたら茜や美波だって危ないのに……!!」
一瞬の躊躇にその後激しい後悔に苛まれる。
土生(茜の言ったことは本当だった。疑っていたわけじゃなかったけど、信じたくなかったんだ……)
ふと空を見上げると陽が昇りそうになっているのに気づく。
土生「夜が明ける……」
優勝者を除き少女たちにとって人生最後の一日が始まる。
渡邉は150メートル走ったところで息が切れ、木を背にして腰を下ろす。
渡邉「ハッ、ハッ、ハッ……。はあ~~危なかった……」
武器もバッグも失ったが、命がありさえすればどうということはない。
幸いにも無傷で体力も有り余り、やる気も満ち満ちている。
昨晩長沢に食べられた体の傷はすでに治りかけていた。
気にすることは満月の夜が終わったことだけだ。
渡邉(せっかく直した狙撃銃だったのに、取られちゃった……。まいっか)
武器が無くなったなら、誰かからもらえばいいだけの話だ。
渡邉「やれやれ」
丸腰の渡邉はある場所を目指して歩き出す。
06:00
澤部『皆さん、おはようございまーす!!』
6時になりテンションを高めて五回目の放送を始める。
澤部『え~残念ならが死亡者はいません!!何やってんだよやる気あんのかお前らァ?!』
その後に禁止エリアになる三か所を発表し最後に言う。
澤部『いよいよ今日で終わりだからな!はりきって逝ってみよ――!』
放送を終え、ソファーに座りふんぞり返る。
黒服4「お疲れ様です」
船は夜明け前の奇襲を受け黒服三人が死亡し、生きているのは澤部と黒服4の二人だった。
二人は長濱の手製毒ガス弾をガスマスクを装着して事なきを得ていた。
澤部「クソォッ!ねるのやつぅううぅ!!ぶっ殺してやる――」
口で言いつつもできずにいる。
苛立ちが募りいつまでも腹を立てていた。
・・・・・・
最北端に位置する灯台に三人の少女がいた。
志田「理佐理佐理佐理佐ァ!!!!」
屋上で弓矢を持ち警備していた十番志田愛佳は急いで筒の間の螺旋階段を降りる。
下まで行くと扉は二つあり、一つは外の出入口、もう一つは灯内の部屋になっている。
菅井「えッ!理佐ぁ!?」
志田の声は部屋にいた十一番菅井友香に聞こえ出入口へ向っていた。
鈴本「……す――」
隅でうずくまっているのは十二番鈴本美愉でまだ眠りに就いていた。
二人は施錠していた扉を開けると、疲れ果てたニ十一番渡邉理佐がそこにいた。
手にはスナイパーライフルを持っていたがお構いなしに抱き着く。
志田「りっちゃんッ!!!!」
菅井「理佐ぁっ!!!」
理佐「愛佳……!友香……!!」
三人は涙流して再会を喜び合う。
屋内に招き入れて理佐を休ませる。
志田「いや~マジでよかったぁ無事で……!」
理佐「美愉もいたんだね。三人でここにいたんだ……」
菅井「ここに来たのは昨日の夕方頃なの」
菅井は分校から出てからのことを語り始める。
マネージャーが死に詩織が殺されて、転校生が怖くて山の中で泣いていた。
爺やが助けに来てくれるかもなんて現実逃避もした。
でもキャプテンなんかだからなんとかしなくちゃと思ってメンバーを探しに行った。
偶然すぐに美愉に出会った。
すごく怯えて泣いていた。
菅井『み、美愉!!!!』
鈴本『ゆ……友香!!?ご、来ないで……殺さないで――!!』
菅井『な、何言ってんのよ!そんなことするはずないじゃない!!』
鈴本『あああ……!!!』
その後ばったり愛佳にも会った。
仲間を増やしにもう1時30分過ぎてたけど分校に向かった。
今ならまだ名前の順最後の方の子たちがいると思って。
志田(本当は理佐に会うためだけに行ったんだけどね)
分校の近くまで来たら――虹花がいた。
志田「そしたらあいつ斧なんか振り回して襲ってきやがったんだよ!マジ許せねぇ!!」
菅井「しょうがないよ……こんな状況だもん。きっとあの子も怖ったんだよ……」
理佐「……。虹花になら会ったよ」
志田「え!大丈夫だったの!?」
理佐「まあ死んでたんだけどね。私が分校から出た時にはもう……」
菅井(!?じゃあ、あの後すぐにってこと……?)
志田「ざまァ!そういえば初っ端放送で呼ばれてたもんな!」
理佐「…………」
虹花に襲われてなんとか三人で逃げ切れた。
でも、『もう”これ以上”他のメンバーは絶対信用できない』って美愉の心が壊れそうになっていた。
理佐「そりゃあそうなるよ――」
ずっと目立たなそうな森の中に潜んでたけど昨日の18時の放送で禁止エリアに選ばれた。
どこに移動するかで悩んで、みんな疲れてたし屋内がいいって地図に灯台マークがあったからここに来た。
志田「ここならもし転校生のヤツが来たとしても上から狙撃で追い払えるから」
志田は天井まで届きそうな弓と矢を見せ、交替で屋上で警備していたと言う。
理佐「誰か来た?」
志田「夜の間に誰か来たんだけど、暗くて顔が見えなくて怖かったから矢射ったら逃げてった。あ、当たらなかったよ!」
菅井「理佐は、その……他に誰かと会った?」
理佐「いいや。私も怖くてずっと森に隠れてたから」
菅井「そ、そう……?」
理佐「みんなどんどん死んでいって怖くて丸一日じっとしてたんだけど、動かなきゃとどの道死ぬと思ってね」
志田「でも、うちらも死ぬしかないのかな……」
菅井「なんとかね、脱出方法を考えてたんだけど全然ダメ……」
志田「思いつくわけないじゃん!これが外れないとどうしようもないよ!」
チョーカーを触って言う志田は弱音を吐き、すでに諦めている様子だった。
理佐は脱出など考えていなかったが、ふとあるメンバーの顔が思い浮べる。
理佐「ねる――」
志田「ん?ねる!?」
理佐「あの子ならきっと、脱出方法を思いついてそうな……そんな気がする」
菅井「た、確かに……!さっきの放送で誰も死んでなかったし、ねるなら思いついてるよ!!」
志田「…………」
長濱の名が出て来たことに嫉妬しているのか不機嫌そうな顔をする。
プラスの話が出たので菅井はずっと訊ねたかったことを聞く。
菅井「あの、理佐に聞きたいことがあるんだけど……」
理佐「……何、改まって?」
今日死ぬかもしれないのにわざわざ前置きすることから余程聞きずらいことだと察する。
菅井「葵ちゃんに、会った?」
理佐「!え、葵に?……えっ!?」
志田「理佐…………」
今しがた誰とも会っていないと話したばかりなのに、一個人に会ったのかと問われる。
それがゲーム序盤に故人となったメンバーということは、つまり――。
鈴本「う……ん?」
菅井志田「!!」
返事をしようとした時、鈴本は眠りから覚めた。
理佐「美愉……!」
鈴本と再会したことに喜びたく近寄ろうとする。
グループ一の寝坊助である彼女は理佐を見た瞬間、宇宙一の寝起きの良さと顔芸を見せる。
鈴本「ぅんぎゃああああああああぁああああぁぁああああああああああ゙ああぁぁっああ゙あ゙あ゙!!!!?!!???!?」
菅井「み、美愉っ!!」
志田「す、鈴本ぉ!!」
理佐「みゆ――」
先程まで赤ん坊のようにすやすや眠っていた鈴本がこの世の終わりのように叫んでいる。
悪い夢でも見たのか、それにしては一点を見て大口を開けている。
理佐「……!!」
まるで殺人鬼を恐れているような最新の顔芸で見られる。
鈴本「んんんんんんなんでぇ!!!!?こっこッここここにィィイイイイ????!」
理佐「み、ゆ……?どうし――」
なだめようと鈴本へ近寄よろうとする。
鈴本は瞬時にナイフ二本を取り出して叫ぶ。
鈴本「動かないでェッ!!!!!」
その場に全員がピタリと止まる。
菅井「美愉っ!?」
志田「オイ鈴本ッ!!!」
鈴本「私は見たんだよ!!!!!葵が撃たれるとこを!!!!理佐に殺されるところをお!!!!!」
理佐「!?――え、いや……」
鈴本は菅井に会う前に、原田が理佐に殺された現場を見たという。
否定しようとすると代わりにしてくれる人がいた。
志田「だから人違いだって!!理佐がそんなことするわけねえだろっ!!」
鈴本「そうだ!!!その銃ぅ!!!!間違いなく理佐だッ!!!ほらァねえェ狙撃銃だよ!!!私言ったよね!!!!?」
理佐の脇にあるスナイパーライフルを指差して同意を求める。
菅井「あっ……!」
菅井は聞かされていた情報を思い出す。
知るはずもない理佐が持っている武器が一致し、疑いが確信へ近づく。
それでも約一名は庇い続ける。
志田「別のやつに同じライフルが支給されてるかもしれないだろ!」
鈴本「いいや!澤部が言ってたジャン!!それぞれ違う武器を支給しますってェ!!!!」
志田「じゃあ似てる銃を――」
鈴本「もう武器とかどうでもいいよ!!!私が見たのは顔!!!その顔だよお!!!!!!」
志田「ッ……!」
理佐「お、落ち着いて美愉……!それは私じゃない……!!」
鈴本「嘘だッ!!!!オマヱガ、アヲヰヲ――!!」
理佐「…………!!」
志田「嘘ついてるのはお前だよ鈴本ゥー!!!」
鈴本「ハ――アアアアァハハアン!?!?!な、な、なんで私がッこんな嘘つく必要がどこにあるのぉおお?!?!?!」
菅井「た、確かに……。でも――」
志田「分かんないよ!」
理佐「まな、か……?」
志田「鈴本は理佐に敵対心持ってんじゃん!!」
鈴本「はあ~~?テキタイシン……?なんだよソレ――」
菅井「そ、それって……織田のこと?」
鈴本「オダナナ!?!?」
志田「織田はぽんのことが好きだ。でも、ぽんは死んだ」
菅井「ちょっ?だからって!こんな時に恋敵の理佐を蹴落とそうとしてるなんて考えられないよ!!!」
鈴本「コバユイが死ぬずっと昔から言ったじゃん!!?理佐が葵を殺したって!!!後出しじゃんけんしてないよ!!!!」
理佐「あああ!!もうッ!!!」
痺れを切らした理佐がキレる。
三人は唯一銃を持っている彼女にビクつく。
理佐「もし私がこのゲームに乗ってたら今この場でみんなを撃ってる!」
志田「そ、そうだよ!!理佐は犯人じゃない!!」
菅井「そう、よね……!理佐が人を殺したりしなんて――」
鈴本「!!!――いいや!!!弾に限りがあるから今は温存させるために取っといてるんじゃないの???メンバーはまだ半分も残ってるもんねえ!!?」
理佐「……ミユ……」
もはや鈴本に何を言っても通じない。
潔白を証明するにはどうすればよいのか。
鈴本「嘘じゃないって言うならその銃の弾改めさせて!!一発も撃ってないなら信じるから!!」
理佐「!…………」
理佐は何も言い返さず、都合が悪い顔をする。
志田「……理佐?どうしたの?」
理佐「撃ったよ。五発」
志田「エッ……!」
荷物検査をされれば判ることを先に言う。
満パンだった弾ケースから五発消えていることを白状する。
鈴本「ほ、ほらあ!!それで葵を……!!」
理佐「だからそれはないッ!!!」
鈴本「――ひっ!」
菅井「じゃあ、一体誰に……?」
理佐「撃ったのは――澤部にだよ!!!」
菅井「さ、澤部さん?!」
鈴本「な、何言ってんだよ!?澤部に撃てるわけ……」
志田「どうやってぼぅ。にっ!?」
分校で最後まで残り名前が呼ばれた。
廊下で出るとこの武器を受け取り、素人でもすぐに狙撃銃だと判った。
五分後の午前2時には分校が禁止エリアになると聞かされ急いで脱した。
分校から出て来た運営側のやつらを殺るのは今しかないと思った。
山から月明かりがあるとはいえ、銃を撃ったこともないのに全員を狙撃するのは無理だ。
だから狙うのはヘリコプターにした。
菅井「へ、ヘリィ!?」
理佐「あいつらが船に戻るため校庭に停めてあったヘリが空を飛んでいる時に撃ち落とせば全員やっつけられると思った」
志田「そ、それで!?」
理佐「でもダメだった。五発撃って二・三発は当たったけど弾かれて、そのまま船へ――」
菅井「す、すごい……!そんなことが……!」
鈴本「……!!!」
ゲーム開始直後に連続して銃声が響いていたことを思い出す。
理佐なりに運営側を倒す方法をものの数分で考え、冷静に実行に移していた。
鈴本「う、嘘だよ!!!なんだよその作り話誰が信じる!?葵を撃ったんだろ!!!!」
理佐「信じて、美愉。私は葵を撃ってない。撃つわけがないんだ……!」
理佐の言葉は真に迫るものがあった。
嘘は言っていないように聞こえる。
鈴本「でも私はこの目で見たんだからあ!!!」
しかしあの瞬間が頭から離れず、自分を信じて負けじと退かない。
二者間の平行線はどこまでも広がっている。
第三者に意見を求めるしかない。
鈴本「友香はどっちの言うことを信じるの!!」
菅井「わ、私は――…………」
発言の番のまま黙ってしまう。
最初の分校でもそうだった。
理佐にどうなっていると聞かれ、判らなければすぐに答えれば良かったものを。
いつまでも結論を出さない優柔不断なキャプテンへ催促する。
鈴本「ねえッ!」
菅井「っり、理佐がそんなことをするとは思わない……!!」
鈴本「!!友香ァ~~!!!」
菅井「でもォ!!!」
志田理佐「!?」
鈴本「でも何ィ!?!」
菅井「美愉が嘘をつくとも思えない!!!!」
鈴本「っ、ゆうかぁ……!!」
永遠にこのまま言い合っていても仕方ないので判決を言い渡す。
鈴本「要求は一つ!!ここから出てって!!!!」
理佐は明らかに悲しそうな眼をしそれを受け入れる。
理佐「…………。分かった。出ていくよ。それで気が済むのなら……」
志田「理佐あ!?」
せっかく再会したのにこんな形で別れるは非常に苦しい。
どの道今日が終われば一人にならなければ全員が死ぬ。
人生最後の日に二年半共にした仲間から糾弾されるなど夢にも思わなかった。
そんな顔をして出入口へ行こうとした時だった。
志田「私も一緒に行く」
菅井「え」
鈴本「マナカ???」
理佐「いや、でも――」
志田「理佐がこんなゴミゲームに乗るなんてあり得ないから!」
無条件で理佐の事を信用しきっている志田が言う。
例え理佐が殺人現場にいて血まみれの包丁を持っていても理佐は無実だと庇うだろう。
そうなるとまた話は変わってくる。
鈴本は殺人鬼と一緒に出て行こうとする志田の心配をする。
鈴本「ん待ってよっ!!!愛佳……殺されるよ!!?」
志田「まだ言ってんのかよ。理佐に殺されるんだったら別にいいわ」
理佐「……愛佳?」
鈴本「オィイ!出てくなら理佐一人で出てけ――!!!」
再び志田と鈴本が激しく言い合いをしている。
入ってしまった亀裂はもう二度と修復することはできない。
菅井はキャプテンとしてメンバーをまとめなければと気持ちが焦る。
菅井(ああ……、ダメだ……!私だけじゃみんなを収集つけられない。こんな時、茜が居たら――)
この場にいない副キャプテンのことを想う。
守屋がいたらどうするか考えると心が熱くなり勇気が湧いて来る。
菅井「理佐が葵と会っていないって言うんだったら……それは理佐じゃないっ!」
理佐「友香……!」
鈴本「じゃあ誰だよっ!!!」
菅井「そ、それは――……」
言葉に詰まる菅井。
その先は永遠に出て来ないだろう。
渡邉が原田を殺した光景がはっきり脳裏をよぎる。
鈴本(やっぱりダメだ――)
何を言っても信じてくれない。
永遠に水をかけ合い堂々巡りするだけだ。
鈴本(今こいつを生かしたらきっと殺される……!!織田も……!!!!)
眼がサイレントマジョリティーモードに突入し、帝王フリーザのファイティングポーズのような構えで両手にナイフを握る。
菅井「!!美愉……?何を――」
鈴本「死ね」
志田「すず――」
理佐「ッ!!」
凍てつく殺気を感じ、咄嗟にスナイパーライフルを向けざるを得なかった。
鈴本は高速で理佐へ接近し距離を詰める。
理佐は引き金に指をかけて絶叫する。
理佐「ああああああああ……!!!!」
志田「理佐ァッ!!!!」
右のナイフの切っ先で銃口をずらされる。
理佐「あっ……」
引き金を絞れなかった。
例え撃ったところで鈴本にかわされたいた。
鈴本「フン!」
続けて流れるようにライフルを蹴り上げられ、入り口付近まで飛ばされる。
丸腰になった理佐へ別れを告げる。
鈴本「葵に謝って来い」
左手のナイフを理佐の首へ刺しに行く。
理佐はどうすることもできず、目をつぶることしかできなかった。
理佐「っ!………………っ?」
目を閉じてから三秒が経ち、攻撃が来ないのでそっと目を開ける。
すると首元にはナイフが皮一枚のところで止まっていた。
止まっている理由は、鈴本の左腕に矢が生えていたからだ。
鈴本「――うがおああぁあああぁあぁあっ!?!?あっあ~ああぁあああ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!」
痛覚による新しいレパートリーの顔芸を次々に披露しながら床にのたうち回る。
志田は床から天井に届きそうなほど長い弓を立てて、今しがた矢を放ったばかりの構えでいる。
志田「理佐は――殺させない!」
鈴本「ンッマッ!!まッ……マナガァアアアアアァアアアア゙ア゙!!!!!」
汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で志田を睨み付ける。
鈴本「んンン゙!!!なんで!!?わだじは……みんなを……守りだい、だけなのにいぃいいいい゙!!!!」
鈴本は守りたい気持ちを涙ながらに訴える。
理佐「美愉ゥっ!!!」
菅井「な、なんてことを……!!愛佳っ!!!何で射ったの!!?」
志田「なんでもクソもあるかあ!!理佐を殺そうとしたからだよ!!!」
鈴本「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛あああああああああああああああああああああああぁああいっ!!!!!!!」
激痛に目が回る。
どこを見るわけでもなく、焦点が定まらない。
引き抜こうにも無理だ。
いっそ左腕ごとなくなれば少しは楽になるのではと思う。
鈴本(愛佳は……理佐のためなら死ねる……。なら、こいつも――)
いくら理佐のことが好きとはいえ殺人鬼の肩を持つなんて間違ってる。
鈴本「敵だぁああああああああぁああッ!!!!!」
健全な右手で志田に向かって投擲のモーションに入る。
志田も次の矢を装填し弓を引く。
菅井「やめなさい!!!!」
菅井は仲裁するため二人の間に両手を広げ飛び込む。
志田「!!」
鈴本「あ」
志田は矢を射るのを直前で止めるも、鈴本の手からナイフが放たれる。
ナイフは菅井の上背に深く突き刺さる。
菅井「!!ぐっふ……!!」
血を吐きうつ伏せに崩れ落ちる。
理佐「友香ッ!!!」
志田「マジ、かよ――」
菅井「ゴッホ!」
ナイフは背中から肺に刺さり、咳き込む口から血を吐き出す。
鈴本「ゆ・う・か……?」
自分が投げたナイフが仲間にしてくれた菅井を傷つけてしまい完全に放心する。
ただ一人傷つかず、傷つけてないメンバーがいた。
理佐(私がここに来てしまったから……こんなことになってしまった……。私が私ガわタシがタワシガわたしが――)
全ての責任を一身に追い、心が張り裂ける。
理佐「嫌あぁああアアアアアアアアアぁああああああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
散々喚き散らした少女たちの中で一番の絶叫をする。
志田「理佐ァッ!!!?」
鈴本「ょ……???」
理佐の反応に疑問を抱く。
とても原田を殺した人間の反応ではない。
先程のやり取りでも理佐は嘘をついているように見えなかった。
だとしたらあれは理佐でなければ一体誰だったんだ。
その時、突然入り口の扉が開かれる。
一同が注目する中、入って来た来客に驚く。
鈴本「――りさ!うぇ!?……リサ?」
その顔は理佐と全く同じ顔をしていた。
志田「理佐……が、二人!?」
理佐「あ?――……わ、た、し?」
理佐は鏡でも見ているのではないかと錯覚した。
自分の頭がおかしくなったのではと疑えるほど現実に戻って来た。
渡邉「……」
入口付近に転がっている鈴本に蹴り飛ばされライフルを拾う。
慣れた手つきでライフルを構え鈴本に向ける。
鈴本「!!!」
理佐と同じ顔だ。双子?整形?
そんなことはどうでもいい。
こいつが葵を殺し、私たちを殺しに送り込まれた転校生か。
鈴本(やっぱり私は間違ってなかった。ほら――)
自分は正しかったのだと誰に問うわけでもなく確めたかった。
鈴本「ね」
ひらがな一言が鈴本美愉の最期の言葉となる。
ライフルから放たれた弾丸は額から侵入し、脳を巻き込みながら貫通した。
理佐「ぁ……!!」
志田「……っ」
ザ・クールは固まり動けないでいる。
菅井はうつ伏せのまま薄目で状況を見ていた。
何が起こっているのか理解し始める。
菅井(そういう、ことだったのね……。この子が転校生……!)
渡邉は何も言わずボルトアクションで空薬莢を弾く。
今度は近くに倒れている菅井へ歩み寄る。
菅井(こっちに来る――!)
呼吸を止めて、死んだふりをして待つ。
脳内で反撃の算段を立てて、何度もシミュレーションする。
足音が隣で止まった。
気配がすぐそこにあるのを感じ取る。
菅井(これが、最後の……がんばりきッ!!)
死を確かめに屈んだ時、素早く上体を上げ隠し持っていた鎖鎌を首へ回す。
渡邉「!」
理佐「友香……!!」
完全に首を捕らえ、鎖鎌を引くと頸椎に当たった感触がした。
菅井(手応え有り――、へ?)
鎌はそれ以上食い込むことなく止まった。
それどころか目の前の理佐と同じ顔は無表情だった。
渡邉「……」
とっさにライフルをバックパスで背にして銃身で防御していたのだ。
菅井(こ、このぉ――っ!!)
諦めずに力ずくで引くとわずかに動き、首に刃が近づく。
渡邉「!」
渡邉は踏ん張り、ライフルを持つ手を片手から両手にして耐える。
菅井も仰向けの状態で上体を支えていた肘を上げ、鎌の柄を持ち両手で引っ張る。
力が拮抗しいい勝負をする。
最後の力の振り絞り勝負に出る菅井。
菅井「ぐっ――ぅううう……ああああああああああ!!!!」
渡邉「ぬん!」
ライフルに渾身の力が込められ、衝撃で鎖鎌が手から弾き飛ばされた。
菅井(そんな……っ)
渡邉は菅井の背中に刺さっているナイフを抜き、確実に心臓へ刺し直した。
菅井「ごふっ!!」
心臓を止められ、漢字欅キャプテン菅井友香は絶命する。
志田「理佐ァ、逃げよっ!!」
しゃがんでいる理佐の手を引き、外を目指して走る。
部屋から出て、螺旋階段がある筒の間から出入口の扉を開けようとする。
志田「あ、開かなーい!!」
理佐「――!?」
扉は押しても引いても体当たりしても開かなかった。
もはや外へ出るには部屋の窓から他ない。
ライフルを持った渡邉の足音が近づいて来る。
志田「く、来る――!!」
志田は理佐の手を引いて、螺旋階段を上り上へ逃れる。
渡邉は筒の間へ入り、ライフルを上へ向けて撃つ。
志田「ひゃあッ!!!」
理佐「くふん!!!」
弾は壁に当たり砕いた。
二人はそれでも階段を駆け上り、上までたどり着いた。
外に出ると景色が開け、朝の気持ちのよい冷たい風が強く吹いていた。
部屋から見える海とは違い、地上20メートルだとより綺麗に地平線が見える。
上まで逃げて来たはいいが、完全に逃げ場を失う。
飛び降りれば死。
足から落ちたとしても骨は確実に折れ、とどめを刺される。
飛び降りなくても上って来る転校生に撃ち殺される。
志田「何なんだよアイツぅ!訳わか――」
理佐「愛佳。どういうこと」
突然志田へ漠然的な問いをぶつける。
志田「!?どういうことって、こっちが聞きたいよぉ!」
理佐「嘘だッ!!!」
志田「!!??…………えっ、なに……?」
理佐「アイツは入口に一番近かった愛佳の横を通り過ぎて、先に二人を殺しに行った」
志田「!り、さ……?」
理佐「愛佳言ったよね。『理佐が二人』って」
志田「そ、それはだって……同じ顔だったから――!!」
理佐「例え愛佳そっくりの偽物が現れたとしてもそんなセリフ出てこないし、絶対に見間違えないよ!!」
志田「いやっ違うんだって!!私はほんとっなんにも……っ」
理佐「お前ナメてんのかあ!!!」
認めようとしない志田にそれ以上言い訳不要だと一喝する。
志田「理佐……」
理佐「なんで嘘をついた?あいつは誰!何を企んでる!?」
志田「それは――……」
渡邉「あーあ。バレちゃった」
渡邉が上までたどり着き、姿を現す。
理佐「お前~~ッ!!!」
入り口は塞がれ筒の間に戻ることができない。
スナイパーライフルを恐れ、広くないドーナツ状の足場で反対側に行かないまでも塔に隠れられる位置まで距離を置く。
渡邉「志田さん。もういいですよね」
志田「……」
理佐「愛佳ァ!?じゃあ、やっぱり……!!」
渡邉はここに来て終にその正体を明かす。
渡邉「私は――渡邉美穂です」
理佐「みほ……?って、美穂ぉ!?」
さらっと自己紹介した名前に聞き覚えがあり耳を疑う。
渡邉「ハイ。埼玉が生んだ、怒涛の、起爆剤!渡邉美穂です」
理佐「うッそ…………」
赤の他人かと思いきや、見たことがあるキャッチフレーズを見て本人だと確信する。
目の前にいる自分と同じ顔をした相手に問う。
理佐「そ、その顔は何?背も……。意味がわから……ない…………」
渡邉「ベースは似てましたから顔はちょこっとだけいじって、背は骨延長手術で足と腕を伸ばしました。あと、ダイエットも頑張ったんですよ」
胸と顔の大きさまでは変えられず、原田葵に抱き着かれた時に違うと気づかれたのだ。
渡辺梨加に関しては初対面でバレた理由は不明だった。
や、いい意味で。
理佐「そこまでして何がしたいの!?あんたが生き残って私の人生を歩むつもり?!」
渡邉「あっはは、そんなことはしませんよ~。ただ漢字をぶっ潰して、あくまで美穂としてひらがなをやっていきますから」
理佐「漢字欅を潰す!?なんでそれに愛佳が加担してるのわけ……?」
志田は目をそらし、口を噤む。
後ろめたいことがあるのか、この状況は想定していなかったものだと感じる。
理佐にバレる前までは全て演技だったということだ。
ここまで来たなら言わずにはいられなかった。
志田「理佐と一緒に死にたいから」
理佐「…………は?こんな時に、何バカなこと……言って――?」
志田はふざけていったわけではないと判り、頭の中が真っ白になる。
自分と一緒に死にたいからこの殺し合いに進んで参加したのだと言っている。
志田「理佐はいつか卒業して別々の道を歩んで、どこの馬の骨化も分からない男と結婚して、子供を産んで、年を取っていく……」
理佐「はあ?それが普通じゃん。何が……え?」
訳が分からな過ぎて頭が混乱しついて行けない。
いっそついて行きたくもないと考えるのを止めたくなる。
志田「普通じゃいられないんだよ!!理佐を誰かに理佐を取られたくない!一緒に歩めない人生ならせめて若い10代のうちに――」
理佐(だ、ダメだ……!こいつら、正気じゃないっ…………)
志田「一緒に生きられなくても、一緒に死ぬことはできる」
理佐「……」
もう何を言っても何の意味もないと悟った。
話を要約すると漢字欅が殺し合いをさせられてるのは志田と渡邉の意思で行われたのだ。
理佐(悪の元凶はこいつらだ。こいつらがいなければこんなことにはならなかったんだ……。絶対に……許さない!!!!)
クールに復讐の青い炎をその瞳に宿す。
志田「だから、一緒に死のっ」
理佐「美穂ォ!!理由を教えろよ!なんで漢字欅なんだよ!選抜になりたいだけならこんなこと――」
渡邉「漢字がダメになったからですよ」
昨日、自分たちの冠番組MCから言われたことを思い出していた。
澤部『このグループはダメになりましたー!』
理佐(またそれか――)
渡邉「紅白であんなゴミみたいなパフォーマンスを日本中のお茶の間にお届けして。恥ずかしくないんですか?」
理佐「あの時は……っ、いろいろあったんだよ。ほんとに……!」
渡邉「あなたたちはアイドル以前にテレビに出るという根本的なところから間違ってるんですよ。言っときますけどこれは個人的な意見なんかじゃなく、多くの人の総意です。だからこの島にいるんですよ。それちゃんと解ってます?」
理佐「なん、だと……?」
渡邉「ここにいるのは他でもない自分たちのせいなの、自覚してますか?」
理佐「ふざけるなァ!!」
渡邉「大マジです。なので~きれいさっぱり跡形もなく一人残らず消えてくれません?てゆうか、消してあげるために来たんですから」
渡邉「言わばこれは救済処置でもあるんです。これ以上坂を転がり落ちて生き恥を晒さずに済んで、グループが謎の失踪を遂げたら伝説になるんですよ!いいじゃないですか!」
志田「……ふん」
渡邉「アイドルの枠をはみ出ようとアーティストのふりなんか中途半端なことして、ひらがなにどんだけ迷惑がかかってることか……。ダンスはバラバラで、歌は口パクなのに過呼吸になるとかコントですか?だとしても寒いですから」
理佐「世間にそう思われていてもおかしくはない。お前にも分からないよ」
渡邉「分かりたくもないですよ。たかが知れてそうですしね。全く、アイドルってのは人に勇気づけたり励ましたりするのに、漢字と来たら次から次へとどいつもこいつも闇落ちして……不愉快なんだよ!」
理佐「うるさいッ!!!」
いつまでもだらだら話す渡邉を一喝する。
それも軽く鼻で笑われ本題に戻る。
渡邉「理佐さん、選んでください。私に撃ち殺されるか、愛佳さんと落ちて死ぬか。三分だけ待ってあげます」
理佐「――っ!」
余命三分を言い渡され、心臓の鼓動が加速する。
愛佳と高さは20メートルから飛び降り自殺か。
一方、美穂から撃ち殺されるか。
どちらにしろ死を選ぶことには変わりない。
理佐(こいつにだけは殺されたくない!!!)
志田「諦めよっ。選ぶまでもなくない?」
志田の押しもあり、最初から選択肢などないに等しい。
第三の選択肢があるとすれば、それが生きることになるのか。
志田を人質にしたところで、躊躇なく撃ち殺されるだろう。
普通に考えて生き残る方法はない。
理佐「……」
渡邉はライフルの引き金に指をかけている。
射程距離はかなり遠くまでならいけそうだが、逆に近すぎたら撃てない。
切り崩すには志田しかないと振り向く。
理佐「愛佳は、私のこと好き?」
志田「うん!!愛してる!!だからここに来たんだよ!」
理佐「じゃあどうして京子と――」
志田「あっ!!あれは違うよ!!!私はいつも常にどんな時も理佐の事しか考えてない!!!あまりにも振り向いてくれないからヤキモチ妬かせたくて見せつけてたの!!!」
理佐「わかってたよ」
志田「え……?」
バレバレなんだよ。わざとらしく齋藤京子にべたべたしていたことは。
それがウザったくて、男の影もあったから距離を置いたのだ。
理佐「それでも私は織田が好き」
志田「っ……、分かってる。でも、理佐が織田を好きな気持ち以上に私の愛が絶対勝ってる!!」
タイムリミットまで残り一分を切っている。
柵に腰を預けてふと空を仰ぐ。
理佐(空が青い。太陽が眩しい。私は今生きている。これから本当に死ぬのか)
人生なんてずっと果てしなく永遠に続くものだと思っていた。
それが今健康体にも拘わらずあと一分で死ぬということが信じられない。
理佐(どうせ終わるなら皆がそうだったのように――最後の最後まで抵抗し続ける!!)
友香は美愉を守るために盾になった。
美愉も皆を守るためにあそこまで必死になって戦っていたのだ。
理佐(私は誰にも殺させない。自分の意志で死ぬ!ただし、こいつらも道連れだ――!!)
追い詰められ、ここ一番で最もクールになる。
渡邉「決まりました~?」
三分が経過しわざとらしく聞く。
どうせ志田と飛び降り自殺するしかないのだから聞くまでもない。
志田「理佐――」
理佐「…………フッ」
一陣の風が吹き前髪が舞うと、その表情は笑っていた。
志田「ん!?」
渡邉(何?こいつなんで笑っ――)
理佐は両手を外へ広げて空を仰ぐ。
志田「理、佐……?なっ――」
渡邉「!!」
柵に寄りかかり腰に当たる所に身を任せる。
そのまま仰け反り後転する形で滑り落ちる。
志田「理佐ァあっ!!!!」
身を投げ出された理佐の手を柵から身を乗り出して掴む。
理佐「!!」
志田「うぐっ!!」
志田は腹を柵に打ち付けるも、理佐をつかむ手は離さなかった。
志田「ち、ちょっと待ってよ!!!先に、死なせ、ないから~~ッ!!!」
日常なら志田の、否一人の少女の非力ではとても人間一人を持ち堪える力などない。
しかし、それが世界で一番愛した”渡邉理佐”なら愛の力を発揮できる。
理佐(来た!!やっぱり愛佳は、私を助けに……。そして奴は――)
わざと志田に掴ませるためタイミングを計って飛び降り手を差し伸べていたのだ。
渡邉「大変ですね。このまま二人で落ちればいいんじゃないですか?」
柵は隙間がある鉄棒型のではなく、完全に仕切型だ。
そのため、宙づりの理佐の様子を見に近づいて来た。
志田「同時じゃないと、意味がない!!」
志田が望む最高の死は手を繋いだままではなく、抱き合った状態で同時に落下だった。
そこまでのこだわりを理佐は見透かしており先に身を投じた。
志田(ここで妥協したら死ぬ価値ない――!!)
理佐が完全に下にいる状態なので、今志田が落ちても抱き着くことはできない。
抱き合った状態は絶対に妥協できず死んでも死にきれない。
志田「あッ!!!あんたも手伝えェ!!!!」
なりふり構わず渡邉に助けを求める。
渡邉「どうしよっかな~?」
渡邉に助ける気や理由は無い。
むしろ二人まとめて勝ちが転がっているようなものなのだ。
志田を突き落とすためにすぐ真横まで着いた。
理佐「はあっ!!!」
渡邉「きゃぁ!!?」
宙吊り理佐は隠し持っていたモノを投げつける。
予期せぬ攻撃に対しとっさにライフルを横にして防御する。
渡邉「あっぶなっ……、何?」
ライフルで受け止めたモノを見る。
渡邉(これは、菅井の――鎖鎌!?)
うまく鎌が引っかかり、理佐は柄から伸びる鎖の端っこを握りしめて引く。
渡邉「うおっ!?」
命綱でもあるライフルをひっぱられるも、手放すわけにはいかず両手で引っ張る。
渡邉(こいつ!!ライフルを奪おうとしてる!?)
理佐は落下する力を志田ではなく、渡邉とつながっている鎖鎌へ体重をかける。
渡邉「ぐおぅ!?」
柵に対してくの字に外へ身を乗り出し、志田と同じような格好で理佐を支えている状態になる。
志田「理佐を持ち上げろおおお!!!!」
隣人を無視して鎌を外したいが両手はライフルから離せず塞がれている。
渡邉「痛っ――」
昨晩の戦闘で小指はなくなり、傷が癒えておらず激しく痛み始める。
夜のうちであれば満月の力でこんな状況簡単に乗り越えていただろう。
しかしもう朝で普通の運動部の女子高生に戻った。
渡邉(マズイ!!このままだと奪われる!!!空中ですぐに私を撃ち殺すつもりか!!?……仕方ない――)
仕切型の柵とはいえ、空中で撃たれれば貫通して被弾する恐れがあった。
ライフルを渡さないため上へ引っ張っていた力を反対にし、下へ思いっきりぶん投げ捨てる。
理佐「!!」
ライフルと鎖鎌は遥か下の地面に落ちた。
渡邉「アハァ!!これで――ゑ!!??」
理佐「捕まえた」
ライフルを下へ投げた右手を捕まえた。
渡邉(ひっ――!!!)
一瞬理佐が地獄へと誘う死神に見える。
渡邉(ライフルが落下する時、少しも反応しなかった。取りに行く素振りを見せなった!ということは、こいつの狙いは最初から――私だ!!!)
理佐は渡邉を地獄に引きずり落とすことだけを考えていた。
渡邉「ぉおおら!!!」
繋いでいる右手を激しく振り、理佐を揺らして手を放そうとする。
理佐の反対の手を繋いでいる志田も揺れつられて落ちそうになる。
志田「ちょッ!!揺らすなァ!!!」
志田の蹴りは渡邉の尻に届く。
渡邉「イタ!!?」
手が離れなければ志田が落ちた際に二人を持ち上げることはできず一緒に落ちてしまう。
死に物狂いで握られている手は強力な接着剤のようで離れる気配がない。
志田に反撃して落ちられても困るのでしない。
渡邉(ヤバイ!これはいったん持ち上げるしかない!!それから殴り殺してやる!!!)
志田「理佐あぁああああああ!!!!」
渡邉は上へ力を入れる。志田も愛の力を込める。
理佐「!!」
左手は志田、右手は渡邉と繋がり全体重をかけるも少しずつ持ち上げられていく。
このまま釣り上げられたら最期、まな板の上の鯉になるしかない。
理佐「くっ……!」
ふと、上の渡邉の顔を見ると必死に歯を食いしばっていた。
理佐(ああ、なんて顔してるんだろう。ホントそっくりなんてレベルじゃない。私ってこんな顔もできるんだ……)
もう間もなくしてこんな顔をすることもなく終わろうとしている。
死を悟った瞬間、好きな人の顔が思い浮かぶ。
理佐(織田奈那――にしかしたくなかったけど……!!!)
意を決して再び闘志を燃やす。
好きな人の名を叫び口撃する。
理佐「オダナナァア――グッ!!!」
渡邉「い゙ッ!!!!!?」
理佐に右手を噛みつかれる。
島に来て噛みつかれるのは二人目だ。
この時ばかりは長沢のように食いちぎられればよかったがそうはいかなかった。
アイドルのあまがみではなく、ゴリラのような顔で歯を骨にまで食い込ませて来る。
激痛のあまり柵を持っている左手が離れ、ずるっと空中へ引きずり落とされる。
志田「ずっるッ!!!!」
死の崖っぷちにいて尚、噛んでもらえたことに嫉妬する。
いくら二人とも最愛の人の顔をしているとはいえ志田一人で持てるはずもなくつられて滑落する。
志田「ぅ――ゎ」
理佐「……!!!!」
渡邉(エ。ヤバッ、死――――――――)
三人は宙に浮き、絶対的な死を覚悟すると体感時間が光速を超えて時が止まる。
三者三葉の走馬灯を見る。自分が生まれて物心がついた瞬間から今まさに死ぬ瞬間まで脳が上映する。
渡邉(私は、ここで、死ぬわけにはいかない!!!誰よりも高く――)
渡邉が動くのと同時に、ゆっくりと時計の針は通常の1/60の速度で動き出す。
つまり通常1秒で下へ激突するのに体感では60秒まで引き延ばされる。
引きずり落とされた時に勢いで理佐と同じところまで落ちていた。
理佐を緩衝材とするため上に乗ろうとする。
理佐(させない――!)
理佐も負けじと自分が上に行こうと渡邉と揉み合い、二人の位置は交互する。
二人のワタナベを見ている第三者は黙ってはいなかった。
志田「ぁ」
声は出せなくともすべきことをする。
志田(あんたに理佐を殺させない!!!!)
一番上にいる志田は頭の重さを利用して落下速度を上げ二人の間に入る。
渡邉を引き離して理佐に抱き着こうともがく。
渡邉(なっ!?何すんのこの顔デカ女ァ!!このままじゃ私が……私が?私が!わたしが私がたわしがワタシがワタシわたし私うわぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!)
志田(死ねよお前、マジ邪魔だから。せっかく理佐と二人っきりで死にたかったのに。ま、死ぬか)
ここでは表情すらもウルトラスーパースローモーションでしか動かず、固定された表情のまますぐには変わらない。
邪魔者の渡邉に怒りを覚え死を願うも、直後に叶うことになるため気にするのをやめた。
とてつもなく遅く過ぎる時間の中で、少しずつ地面へ近づきながらも志田は必死にもがき続けついに最愛の人を正面から抱きしめることができがっちりホールドする。
これで抱き合って一緒に死ぬという夢を叶えられる。思い残すことはもう何もない。
強いて言うならキスできなかったのが心残りではあるがもう十分だ。
残り僅かな時間の中で微調整し顔も真正面に近づく。
地面衝突の直前に顔を見て気付く。
志田(り、理佐じゃなぁぁあああああああああああいっ!!!?こいつは――――――)
自分が抱き着いていた人物は理佐ではなく渡邉美穂だった。
時はすでに遅し二人同時に地面へ激突し、理佐はその上に落下した。
その後三人は動くことはなかった。
残り8人
理佐は助かったのかな
読んでいただきありがとうございます!
遅くなって申し訳ありません。
連投規制にひっかりダラダラになってしまってます……
個人的にハードルがあがってるので、3日間空けて仕上げます。
週末に7、8、9、最終話を一気に投下します。
ご指摘いただけましたら幸いです。
お疲れ!続き楽しみにしてるよ!
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コメント
名無しのまとめラボ 2018年9月4日 22:16 ID: IwMjA3OTU
楽しみにしています
名無しのまとめラボ 2018年9月5日 0:42 ID: EwODAwNzc
面白いじゃねーかちきしょー
名無しのまとめラボ 2018年9月6日 0:33 ID: IzNDQxMDY
ワイの推しがぁぁぁ
でも読んでしまう!
名無しのまとめラボ 2018年9月8日 5:05 ID: A5MTQ3NjM
そんなに欅ヲタでもないのに読んでしまった、、、
名無しのまとめラボ 2018年10月1日 16:28 ID: g4NzQ4MzU
推しが…推しが…
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