第八話
12:00
澤部『えー正午の放送をしまーす!』
土生「12時か……」
土生は北の山の中で六回目の放送を聞く。
澤部『まずは死んだ人を発表するぞー。十番志田愛佳、十一番菅井友香、十二番鈴本美愉。二十一番渡邉理佐』
土生「友香っ……!!みんなも……!?」
澤部『それから~二十二番渡邉美穂』
土生(!?ミホ……?そんな子うちに……ってニ十二番!?転校生!!)
澤部『ラストー五番織田奈那。以上!』
土生「奈那ちゃん…………」
たくさんのメンバーが呼ばれる中、六番の名前が呼ばれなかったことに胸を撫でおろす。
前編→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【前編】
中編→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【中編】
中編2→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【中編・2】
後編1→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【後編・1】
後編2→【良スレ】欅坂46・守屋茜「バトルロワイアル?」【後編・2】
二十二番で呼ばれ”ワタナベミホ”というよくいそうな名前は身近で聞いたことがあった。
ひらがな2期生に同じ名前の子がいたことを思い出す。
土生(まさか――いや、どうしてあの子が?意味わかんないよ…………)
二十二番目=転校生=渡邉美穂。
何の理由で島に来て殺し合いに参加しているのか。
自分たちと同じように巻き込まれただけなのか、あるいは――。
何にせよ転校生が死んでくれたことに安堵を覚える。
転校生が亡き今、ゲームに乗っているのは平手一人だけだ。
六回目の放送が終わり6人のメンバーが減り、現在島に生き残っているのは6人だと知る。
六番 小池美波
十四番 長濱ねる
十五番 土生瑞穂
十七番 平手友梨奈
十八番 守屋茜
十九番 米谷奈々未
土生「みいちゃん……」
米谷から託された眼鏡型探知機で小池を探す。
言えば背の高いことから”カッコイイ”と言われることが多かった。
そんな自分に彼女が言ってくれた言葉が忘れられない。
ちょうど二年前、デビュー曲『サイレントマジョリティー』のMV撮影の寒い冬の夜。
渋谷の工事現場で、初めの一本目を撮り終えVチェックをしていた。
見学に来ていたねるはみんなに懐炉を配っている。
石森『てち子オーラすんごい!』
今泉『やばすぎぃ……!』
上村『むむ!てちかっこいい!』
尾関『てちヤバくない!?』
織田『やっぱ友梨奈は別格だな!』
小池『ほんまに中二か!?』
小林『……勝てない』
齋藤『完璧かよ!』
佐藤『1サビのモーゼのところとかカッコ良すぎて鳥肌が立ちすぎてもう涙出てきた~~!』
志田『パなっ!』
菅井『てちすごいじゃない!!』
鈴本『――!?!?』
長濱『みんなかっこいー!』
土生『天才だ……!』
原田『ひらちやるじゃん!』
平手『えへへ!』
守屋『てっちゃんすんごい!!』
米谷『これは売れるで』
渡辺『…………!!』
渡邉『ほんとすごいね……』
メンバーから賞賛を送られ平手はキャロラインな笑顔で照れている。
鈴本は顔芸で、渡辺は瞳で物語っている。
圧倒的パフォーマンスを前に足元にも及ばないと痛感させられた。
呆然としていると突然後ろから声をかけられる。
小池『さすがてちやね』
土生『みいちゃん!あ……あの子は天才だよ』
小池『あの子もすごいけど、私は土生ちゃんもすごいと思うよ』
土生『え!?』
小池『長い手足が伸びるしなやかな動きと迫力のあるゴリラダンス?あと、凛々しい表情がかっこいい!」
土生『ダンスやってたからかな……。それでも未経験のあの子には――』
小池『あ、一つだけ言わしてもらうと……』
ダメ出しされるトーンで前置きされ何かと気になる。
小池『土生ちゃんてかっこいいけど……めっちゃ可愛いよね!』
土生『――エエ!?』
その後「言っちゃったー!」という顔をしてどこかに行ってしまった。
まだそんなに親しくなかった頃なのに、落ち込んでいる自分を勇気づけるために言ってくれたのか。
あんな可愛い子からお世辞でも初めて”可愛い”と言ってもらえたことが嬉しくて胸を締め付けられる。
それ以来彼女の笑顔が夢に見るほどで、今まで知らなかった感情を抱きっぱなしだ。
土生(ああ、神様――。どうか彼女にもう一度だけ逢わせて下さい!!)
周囲6キロ程の島を探し回って、ここまで来たらもう神頼みしかない。
生きているうちに再会しなければ生まれてきた意味がないとまで思い神を心から信じる。
その時、天に願いが届いたのか木の零れ日に天使が降臨する。
土生「!!み……みいちゃん!!」
小池「……!」
それは夢にまで見た六番小池美波だった。
近づいて手を差し伸ばそうとする。
土生「みい――」
小池「い……嫌!!」
土生「!?……えっ?」
小池「こ、来ないでッ!!」
泣きながら相変わらずの甘い声で拒絶し、武器の鈎爪を向けながら後ずさる。
土生の持つスナイパーライフルを見て怯える。
小池「嫌っ!!ころ、コロさないで……!」
土生「はあ……!?」
何故守りたいと思ってる人間にその逆の行為をしなければならないのか。
なりふりかまわず武器と荷物を捨てて正直な気持ちをぶつける。
土生「バカ――!!!!」
小池「どふぇ!?」
おバカで定評のある土生から「バカ」と言われ素っ頓狂な声が出る。
目をつぶり拳を握りしめて熱弁する。
土生「私がみいちゃんを殺すわけない!!そんなこと死んでもっ、ぜ~~~ったいありえなーい!!」
小池「……っ!!」
土生「だから、一緒に――……え?」
ふと小池へ視線を戻すと、視界から消えていた。
遠くに目をやっても後ろ姿すら見えなかった。
何十時間も走り回り探し続けてようやく見つけたのに一瞬で逃げられてしまった。
「バカ」と言ってしまったことで嫌いになって逃げて行ったのだ。
もう何もかも生きる気力も失せて何も考えられなくなった。
こんな一瞬でも会えただけでも良いのか悪いのか絶妙な線だった。
神様に感謝した方がいいのか、または恨むべきなのか悩んでいると籠った声が聞こえた。
??「ごべんなざい!!!」
足元から聞こえ下を見ると土下座している少女がいた。
土生「ぇ……!?」
怒りと涙で深々と地面に頭を下げ謝罪する小池。
高い身長で遠くを見ていたから足元が死角になっていたのだ。
疑っていた自分が恥ずかしくなり、倣って武器を捨てる。
小池「私、土生ちゃんになんてことを……!ほんまにバカや!アホ!ドヂ!マヌケー!!おたんこなす!カボチャ!!」
自分へ叱咤の暴言を吐く。
あまりの高低差に頭が混乱し、安心して腰が抜ける。
土生「よ、よかった…………」
小池「だ、大丈夫!?」
目線が小池と同じ目線になり、手を差し伸べられ手を取る。
土生(手繋いじゃった!!いやいや学生か!でも――)
好きな人と再会できたことが嬉しい。
目を合わせて、手を繋げたことがこの上なく嬉しくてもう殺されてもいいとさえ思ってしまう。
どうせ今日死ぬかもしれないなら一緒に生きる道を考える。
改めて言いかけていたことを伝える。
土生「みいちゃん。一緒にいよう!」
小池「うん!」
二人は手を取り合って見つめ合う。
静かな自然の中、世界で二人しかいない錯覚に陥る。
土生は永遠にこの瞬間が続けばいいと思う。
小悪魔的に小池がほほ笑むと照れて目をそらす。
土生「さてと――」
沈黙を破り立ち上がって言う。
土生「そ、それじゃ、行こっか」
小池「ん?どこへ?」
土生「脱出できるみたいなんだよね」
小池「だ、だっしゅちゅ~~!?」
驚きのあまり舌が滑りうまく言えなかった。
そんな彼女が余計愛おしく守りたいと思った。
土生「米さんと茜、それから合流してればねるもいるはず」
小池「え、ホンマに……?」
米谷たちと落ち合うため決めていた場所を目指す。
土生(やったよ茜!美波は見つけたよ。今行くから――待ってて)
二人は手をつなぎながら森の中を駆ける。
途中、小休止のため川岸で腰を下ろす。
土生は島の状況を話していた。
原田の死体を発見したこと。
診療所で守屋と米谷に会ったこと。
平手がゲームに乗っていること。
今泉の死体を発見し、転校生に襲われたこと。
今泉の遺品であるクナイを出して見せる。
小池「そっか……。ずーみんから、それを……」
土生「このクナイはずーみんの形見なんだ」
小池「また一緒に遊びたかったのに――。みんな、本当に死んでもうたんやな……」
一昨日まで当たり前に一緒にいた仲間たちはもうこの世にはいない。
ウォッチで放送を聞いていたが、分校でマネージャーと佐藤の死体しか見ておらず実感が湧かなかった。
誰よりも怖がりな小池はゲーム開始直後から先程いた場所でずっとじっとしていた。
土生が見つ出すまでは誰とも遭遇せず生き残っていたのだ。
これも探知機のおかげだと米谷に感謝する。
スナイパーライフルを小池に渡す。
土生「転校生も使ってた銃だからみいちゃんも撃てるはず。持っていて?」
小池「え?でも、土生ちゃんは……」
土生「私は射程圏内ならこの長い槍で対抗できるから、今までもこれで生きて来たし」
棒として持っていたが小池と会えた今、守ることを優先に考え先端に槍を装着している。
武器は殺傷力が増しさらにリーチが伸びて誰よりも有効的に使いこなせていた。
土生「それと、もし誰かが近づてきてもこれがあるから」
眼鏡型探知機を外して見せる。
チョーカーのGPSに反応し半径15メートルまでなら探れる代物だ。
小池「ほえ~~これはすごい!!」
土生「これがみんなを見つけられる脱出のチケットなんだ」
小池「あ~はよ米に会いたいわー!」
土生「……」
こんな些細な事でも妬いてしまう。
小池はずっと一人きりだったと言う。
ずっと探し回っていた自分より同郷の米谷の方が会いたかったのと思ってしまう。
小池「行こっ!」
土生「あんっ」
水分補給と小休止を終えて移動を開始する。
腰を上げて、目的地を目指して再び走り出す。
森の中を自然と先行して走るのは小池ですぐ後ろを追いかけるように走っていた。
護衛は対象者の斜め後ろにいるのが基本であり、前からもすぐに気付け後ろからも守ることができる。
その小さい後ろ姿を見ていろいろ考えてしまう。
出会ったら真っ先に気持ちを伝えようと思っていた。
しかし言うタイミングを逃していた。
再会した時も、先程休憩した時もとても言えるような雰囲気ではなかった。
ではいつ言うのか。
言ったとしてもし振られてしまったらどうしよう。
いきなりこんなことを言ってドン引きされてしまったら関係が終わってしまうかもしれない。
楽しく一緒にいられるのであればこのまま何も言わない方が吉ではないか。
土生(いいや、私はバカだ!いつまでうじうじめんどくさいこと考えてる?こんな状況でいつ死ぬかもわからないのに……今言わないと永遠に後悔する――!!)
意を決して、急に立ち止まり名前を呼ぶ。
土生「美波!!」
小池「!!……へ?何?」
急に呼び止められて振り返ると、真剣な眼差しを向けていた。
いつもは愛称で呼んでくれるのに、いきなり呼び捨てになったことに驚く。
土生「私……、美波の事が…………」
小池「!」
土生「初めて会った時から、ずっと――」
小池「ヒッ」
土生「?」
吃逆をしたのかと思った。でもそうではなかった。
一瞬のうちに白い顔は青くなり、その目に涙を浮かべる。
土生「みな――?」
焦点が合っていない。
視線は自分ではなくはるか後方に向けられている。
後ろからズザァと山の斜面を滑り降りる音が聞こえる。
嵐は突然に、現れたのは平手だと小池が気づく。
平手はマシンガンを二人に向けて引き金に指をかける。
土生は振り返りながら懐にあったクナイを飛ばす。
平手「!」
飛来物を避けるか構わず撃つかで迷い体が固まる。
クナイはそのままマシンガンを握る指に刺さる。
平手は痛覚に襲われてマシンガンを地面に落とす。
間髪入れずに迫り来る土生に抜刀する。
土生「タァ!!」
長い腕から振り回す槍は遠心力が加わり、抜刀したての日本刀を彼方へ弾き飛ばした。
しかし振り切った槍の柄を蹴り上げられ弾き飛ばされる。
土生「くっ――、このぉ!」
右ストレートを繰り出すと、右ストレートで応じて来る。
二人の拳はぶつかり合い、光って弾ける。
体格差は圧倒的に有利なのに、押し負け数メートル後退させられた。
土生「なにっ!?」
剥がれけた数枚の爪と拳から流血する。
負傷した右手を見て、死に近づいていることを感じ鼓動が高鳴る。
対して無傷のまま無表情でその場に仁王立ちしている平手。
守屋から奪った拳銃を持っているが接近戦では不利だと出さないでいた。
土生(平手っ……やっぱり天才だ!!こんな場所でも……むしろここに来て――)
平手がゆっくり歩み寄って来る。
とっさにアニメでよく見るファイティングポーズを構える。
小池「土生ちゃんっ!!!」
腰を抜かした小池に心配して呼ばれる。
土生(勝てるのか……こいつに?守れるのか……この子を――!)
気づいたら眼前まで指が迫っていた。
土生「!!うわッ」
先手目潰しを紙一重でかわす。
爪が右瞼を掠めて切れ血が目に入る。
土生「うっ!!」
追撃して来る平手と、離れている小池が視界の端に映る。
小池「ハヴチャ――!!」
土生(美波…………、美波っ!!!)
平手の力のこもった右ジャブ、左フックを後退しながらかわす。
土生(守らないと!命に代えても!!だから……容赦なんてしてられない!!!)
次の右ストレートをかわし、懐に入り拳を握る。
小池「!?土生ちゃ……っ?」
初めて見せる土生の鬼の形相に小池がたじろぐ。
土生「うぉおあああああ――!!!!」
カウンターの右拳を左頬に叩き込む。
退かされた平手の口の端が切れ出血する。
土生「あ――たたたたたたたたたたたたたあたたたたたたたたたーッ!!!!!!!」
正拳付き、張り手、手刀、貫手などを右左交互に繰り出す。
小池を守るために振るう拳が平手を襲う。
手応えはあったが、防御もされている。
攻撃の量で圧倒するも、それでも連撃の嵐を掻い潜り拳を繰り出して来た。
土生「はいいい!!!」
長い腕から繰り出される正拳が先に着弾し、敵の攻撃を届かせない。
平手「…………」
平手は反撃を諦め、防御に専念する。
防御を覚えた平手は段々をキレがよくなり、やがて踊っているかのように綺麗に見えた。
土生(!!ダンス……!?)
3rdシングル『二人セゾン』のソロダンスを思わせるような動きで全ての連撃を防ぎ、かわし、いなし始めた。
土生(バカな!?もう対応して来た!!!なら――)
土生は両手の攻撃に加えて、足で前蹴りを繰り出す。
平手の腹部に入り吹っ飛ばした。
小池「やったー!」
平手「・・・」
平手は腹を抑え、瞳に闇の炎がつきすぐに突っ込ん来た。
土生「!!!あーたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたー!!!!!!!」
今度は両手両足の連撃を繰り出す。
平手は防戦一方で全ての攻撃を防ぎきれず、顔や腹に打撃が入っていた。
彼女の長い手足はモデルやダンスのためのものではない。
人間本来の原始的な戦闘にこそ最も向いていた。
土生(い――イける!!!)
平手をボコボコにしていた、かに見えていた。
四肢から繰り出す連撃すらも順応され始める。
小林から始まり今泉、織田、そして土生いや人間の連続攻撃は通用しない。
土生「!!?」
パンチをかわし、キックを避け、全ての攻撃を回避されている。
徐々に打撃の感覚が消えていくことに気づいている。
土生(全て、かわされている!?こんなに近くにいるのに――決して届かない……)
センター平手には誰も敵わなかった。
4thと5thではフロントで平手の近くにいたが、表現力や魅力全てにおいて足元には及ばないと解っていた。
ここでも圧倒的な力の差を見せつけられ、攻撃に力が失い始める。
小池(なんちゅう反射神経や……!ほんまに人間やない!!!)
傍らで震えて上がり座りながらも逆に背筋が伸びていた。
こちらの攻撃の番である限り反撃されないと思い連撃を止めない。
一瞬だけ平手の首に隙が生じたように見えた。
土生「――ほあたあっ!!!!」
すかさず最速にして渾身の手刀を首めがけて放つ。
平手はそれを待っていたように見切ってかわしつつ攻撃を加える。
小池「へ」
攻撃された土生を傍観している小池の心が崩れる。
土生「痛っ――!?」
繰り出した手刀に激痛が走り、急いで引っ込める。
土生(何?!なんで痛い!?一体何をされ――……)
右手を見ると赤い指が生えていた。
土生「うっ……、あっ」
正確には人差し指から小指まで第一関節より切断された。
心拍数とともに血が噴き出し、その勢いが激しく赤い指が生えてように見える。
地面に落ちている四本の指を見る。
土生(――何?私の……指?なんで?何が起きた?え?は?あ――夢?)
指がなくなり夢ではないかと疑う。
平手は隙だらけの土生を見逃さず顔へ追撃する。
土生「!!!」
小池「あっ」
時間が遅く流れるのを感じる。
ただの喧嘩ではない。命のやり取りをしているのだ。
とりかえしがつかないものを奪われ改めて実感する。
土生「ヴグッ」
小池「は、は……土生ぢゃんッ!!!!」
大粒の涙を流し土生へ腕を伸ばす小池。
土生「痛――――いいいいいいいいいいい゙い゙ぃ゙い゙い゙い゙!!!!!!!」
今度は右目からクナイが生えていた。
それは今泉の形見でもあり、先程自分が投げたものだった。
無意識に痛がるよりまずは平手との距離を取る。
眼球を抉られて完全に右目は光を失った。
痛いどころの騒ぎではない。
指を切断された痛みが緩和するほどの激痛にショック死寸前で持ち堪える。
土生「カハ――……!!!!!」
夢を夢だと自覚すれば数秒後に目が覚める。
しかしこれは現実であり覚めることはなかった。
土生(ゆ、夢じゃないッ!!?ひ、平手ェ~~~~っ!!!)
ただ立っている平手が鬼のように見えた。
右目はなくなり、右手の指もなくなった。
この状況から逆転して勝てるわけがない。
土生(し、死ぬ――。こ、殺される……!!!)
もう東京に帰れない。
やっていたゲームの続きをプレイすることができない。
アニメの最終回を見ることができない。
家族にも友達にも会うこともできない。
生きていることができない。
平手「もういいよ」
土生「!!ヒ、ラ、手!?」
初めて口を開いた。
何が”もういい”のだろうか。
もしかして殺さないでくれるのか。
平手「私が全部終わらせるから」
土生「!?」
次の瞬間、殺意のオーラに完全に飲まれる。
全身が硬直しつつ、脱力していく矛盾。
黙って殺されるしかない。
抗ったところで敵わないと脳が判断して戦闘態勢を解く。
土生(みんな、殺されるんだ…………。こんなやつに敵いっこないんだ―――――)
その時、その場に銃声が響く。
平手「!」
弾丸は土生と平手の間を通り過ぎていった。
銃声がした方を見ると、スナイパーライフルを持つ少女がいた。
小池「は――土生ちゃんは……、瑞穂は!!うちが守るッ!!」
土生「みぃ、美波……っ!!」
愛称ではなく名前で呼ばれたことより、”守る”と言われた事に驚く。
我に返り、平手が来る前のことを思い出す。
土生(そうだ――!!)
言いたいことがあるんだった。
やっぱり美波は可愛いよ。
好き好き大好きやっぱ好き。
やっと見つけたお姫様なんだ。
私が生まれて来た理由、それは美波に出逢うため。
これから一緒に人生を歩んでいきたいんだ――。
平手「……」
平手は小池に向かって歩み出す。
小池「うわー!!!」
再び引き金を絞ると、弾丸は彼方へ飛んでいく。
小池「!?ああああああ!!」
生まれてこの方射撃など当然やったことがなく当たらない。
続けて発砲すると今度は平手に向かって飛ぶも弾道を見切り最低限体を動かしてかわす。
小池「え?エエ!?何!何で?何なん!?」
土生(銃すらも通じないのか……!!)
四・五発目も体を仰け反ってかわされ、弾切れした途端に襲いかかって来た。
小池「ヒッ!!」
土生「――美波ィイイッ!!」
平手を追いかけて、落ちている槍を拾い背中めがけて突く。
槍は空を刺し、忽然と平手の姿が消えた。
土生「?」
代わりに小池と対面することになる。
土生「美波……」
小池「瑞穂」
目と目が合い少女たちは恋に落ち、時が遅く流れる。
二人の間に枯葉がひらひら空から舞い降りて、地面に着地するまで時間を持て余していた。
土生(か、可愛い……)
何秒も何分も何時間も何日も何年もずっと見つめていたい顔に見惚れる。
今は怯え切って泣いているが、見たいのは目を細めて笑うスマイリーな彼女だ。
そんな束の間の憩いに終わりが訪れる。
土生の背後から小池もろとも串刺しにするように鋭利な手刀が迫る。
小池「!!!ああっ」
目の前の小池の瞳に平手が映っている。
それは自分の後ろにいて、まさにとどめを刺しに来ているところだった。
目の前の小池の瞳に平手が映っている。
それは自分の後ろにいて、まさにとどめを刺しに来ているところだった。
避ければ小池に凶刃が届いてしまう。避けれるはずがない。
持っている長い槍を振り回すこともできない。
幸いなことに時間が遅く感じる中自分だけが速く動け、ノールックで振り返りながら裏拳を放つ。
平手「!」
小池「!!」
拳は平手の顎に炸裂し顎関節を外した。
平手はそのまま後退し、顎を抑える。
土生「世界には愛しかない」
2ndシングルの表題曲を言った。
小池「せか、あい……?」
土生「絶対、守るから。見てて」
小池を隅に寄せて平手と向き合う。
全身が愛のパワーに満ち溢れる。
平手「……」
外れた顎をはめ直し、土生へ飛び蹴りを放つ。
それを華麗にかわし、昇竜拳で吹っ飛ばし大樹へ叩きつける。
小池「キレイ……!」
拳を天に上げてくるりと回転する姿は美しく惚れ惚れする。
再び特攻する平手。
激しい攻防の末、わずかに土生が押していた。
土生「つあ!!!」
土生の長い脚が腹を捉えた。
平手は膝をつき腹を抑え込む。
小池(か、勝てる――!!)
平手「…………」
前髪が目元を隠し、表情がうかがえない。
ぶつぶつを声が聞こえ、口が動いているのに気づく。
土生(……何?何か、言っている?)
平手「は……は……」
土生「は?」
平手「土生は二十歳……。二十歳は大人……」
土生「何ッ!?」
平手「サイレントマジョリティー」
小池「うそっ」
平手の目つきが一変し、史上最凶なオーラを醸す。
身の危険を感じ、最警戒で身構える。
突然視界から平手が消え、一瞬で懐に入られる。
土生「んなっ!?」
驚き退く土生の足元に踏み入り、胸へ張り手を打ち込む。
土生「ガッハ!!」
重い音が響き、5メートル飛ばされた。
土生(くっ、なくなった左目の死角から……!!ヴっ――)
肋骨が折れ血を吐き、呼吸するだけで激痛が走る。
土生「ゴッボ!!!グガハ――」
小池「み、瑞穂ォ!!!」
よろめきながら立ち上がり、悪魔へと立ち向かう。
土生(これでもダメか――。それでも、絶対に美波を守る……!!!)
無くなったのは右目…いや、そんなことはどーでもいいや面白いから。
平手は勝負に出る。
サイレントマジョリティーモードで土生を攻撃する。
土生「づッ!!!」
土生は一発一発致命傷になる拳や蹴りを必死に受けて耐えていた。
反撃しないで防御に徹するも、攻撃力の高さに防ぎきれない。
それでも目的を遂行するために、痛みを我慢し膝をつかない。
受けながらある地点まで立ち止まり、そこで防御を解く。
土生「心臓を捧げる――」
右拳を左胸に当て、直立する。
小池「ああッ!!!!ダメェ!!!!」
平手の最強の右をモロに喰らい、彼方へ吹っ飛ばされた。
土生(み、な、み――……)
二度と起き上がることができないほどの致命傷を受け、崩れ落ちる。
小池「ミヅホ――!!!」
平手は小池へ歩き出す。
小池「こ、このダボが!!よくも瑞穂をぉお!!!」
平手「……」
声を震わせ怒りをぶつけるも響かない。
小池の前に立ち止まると、懐から拳銃を取り出して向ける。
小池(!!コロサレル!?……助、けて……!!瑞穂――)
奥歯を鳴らし、涙を流しながら救いを祈る。
その時銃声が鳴り響き、平手の動きが止まった。
小池「――!?」
平手「っ……!!」
持っている銃を地面に落とし、その腕をだらんと垂らす。
右腕から血が滴り地面に垂れる。
ワロタwwww
小池「み、み……みづほ――!!!」
土生「……平手――」
普通に戦っていたら間違いなく殺されていた。
だからここに落ちている機関銃を入手するためわざと攻撃を受け飛ばされたのだ。
小池に当たらないようフルオートではなく、単発発射にして平手へ撃った。
土生「意識外からの攻撃……」
真っ向勝負で銃を撃っても躱されてしまう。
だから不意打ちでやっつけるしかなかった。
平手「……!」
健全な左手で落ちている銃を拾い土生へ向ける。
それより早く土生の持つ機関銃が火を噴き、平手の頭に命中した。
平手「―――」
ヘッドショットされた平手は一目土生を睨めつけて崩れ落ちた。
土生「か、勝った……?勝った、ぞぉ……!!」
眼球一個、右手指四本、肋骨三本、他十か所を犠牲にして勝利をつかむ。
土生に駆け寄る少女がいた。
自然と両靴が脱げてしまうも、倒れている土生へ覆い重なる。
折れた肋骨に響くも、笑顔で耐える。
土生「み、美波っ!」
小池「瑞穂……、かっこよかったで!あと、めっちゃ美しかった!」
土生「……ありがとう。美波がいてくれたから、勝てた……」
小池「何言うてるん!礼を言うんはこっちや!!ほんまにありがとお!!!」
土生「美波……。言いたいことがある……」
小池「何?あっ、平手が来る前に言おうとしてたこと?」
頷き急に緊張し始めるも告白する。
あとよねと再会して欲しかった
土生「実は、私…………」
小池「っ!……え?」
土生「美波のことが好きだ。初めて会った時からずっと――」
小池「~~!!」
土生「ここから出たら、付き合ってほしい」
あまりに突然の告白に驚きたじろぐ。
白い肌が朱く染まり、返事を言う。
小池「い……い、嫌や……」
土生「え…………」
まさか断られるとは思っておらず一瞬で死にたくなった。
告白しなければよかったと後悔の念が押し寄せる。
小池「今すぐにでも彼女にしてほしい!」
土生「!!うん!!」
島で、星で一番幸せの絶頂に至り、もう死んでもいいとさえ思ってしまう。
その願いが直後に叶うとは思っていなかった。
突然彼女の胸にから槍が飛び出し、それは自分の腹にも刺さる。
小池「ごぽっ」
土生「ぐふッ」
彼女の口からあふれ出た血を顔に浴びる。
土生「あ――みゐ……?」
肩を揺するも動くことも返事をすることもない。
胸の中で小池美波が息を引き取った。
土生「―――――?」
何が起こっているのか分からなかった。
判りたくもなく、解らないようにしていた。
小池の背中から生えている棒が目に入り、一本の槍が二人を串刺しにしているのを理解してしまう。
すぐにその後ろに立っている人物に気が付く。
土生「ひ……、ら、手?」
平手「……」
平手友梨奈がそこに立っていた。
土生(――なんで生きて?だって確かに頭を撃ち抜いた、はずなのに……!どうして、何が――)
撃った頭部に注目すると、いつにも増して浮ついていることに気が付く。
土生(!!!やけに頭がもっさりとは思ってたけど……あれは”かつら”だ!!!)
平手に支給された武器は日本刀ともう一つは防弾ヘルメット(鬘)だった。
たまにズラをつけていたことがあり、違和感なく見過ごしてしまっていた。
土生(ごめんね、美波……っ。守って……あげられ、なくて――…………)
死の痛みに顔を歪めるも、薄れゆく意識の中彼女に会うため必死に笑顔を作る。
土生瑞穂は小池美波と共に永逝する。
・・・・・・
南の山で二人を待つ三人が座っていた。
守屋「銃声、だよね?さっきから聞こえるの――」
米谷「ああ。あれはスナイパーライフルやな」
長濱「今島に生きとるのは私たち三人と土生ちゃん、みいちゃん、あと平手だけ……。もしかして――」
米谷「土生か美波、もしくは二人が平手とやり合ってるのかもしれない」
守屋「!!ちょっと私、見てくる」
米谷「待って。そしたらうちが託した探知機の意味がなくなる」
守屋「で、でも……!」
米谷「うちらはここで信じて待つしかない」
守屋「瑞穂……、みいちゃん……」
沈黙が続き、長濱は突然話を始める。
長濱「私たち欅坂46は、AKB48のチーム8に負けてる」
守屋「え……エイト?」
AKB48の5番にできたチームに負けていると言い出した。
急に意味のない話をするはずがないと話に乗る。
米谷「AKBさんそのものではなくて、”チーム8″にすら負けてるってこと?」
頷いて肯定し、分かりやすく例を挙げていく。
長濱「オダナナは、面白さで小田えりなちゃんに負けている」
米谷「織田より……」
長濱「あと、小田えりなちゃんの歌唱力はずーみんの遥か上をゆく」
守屋「え!すごいんだねその子!エースなの?」
長濱「いや、主力メンバーの一人だけどまだまだ上がおる」
守屋「層厚っ!」
長濱「美愉ちゃんは、ダンスで横山結衣ちゃんに。胸も」
守屋「胸って!?」
長濱「ゆいぽんは、ギター・歌で一億光年に一人の長久玲奈ちゃんに。スタイルもしーちゃんよりも足が長い」
守屋「ヤッバ!?!」
米谷「距離やん」
長濱「しーちゃんは、画力で岡部麟ちゃんに」
守屋「え?絵、上手なんだ……」
長濱「虹花ちゃんは、おバカっぽさで吉川七瀬ちゃんに」
守屋「虹花よりおバカって、相当やばいんじゃない!?」
長濱「違うの。偏差値じゃなくて、おバカっぷりで人を喜ばせてくれるのが虹花ちゃんの頭一つ飛び抜けとる」
守屋「そうなんだ……?」
長濱「菜々香ちゃんは、新潟県代表オーディションで早坂つむぎちゃんに」
米谷「そういやチーム8のオーディション受けた言うてたな」
長濱「莉菜は、ロリで同じ97年生まれの髙橋彩音ちゃんに」
守屋「ろり??」
長濱「ねると米さんは、頭脳で橋本陽菜ちゃんに」
米谷「――え」
長濱「尾関は、何かが濱咲友菜ちゃんに」
守屋「ん何が?!」
長濱「みいちゃんは、肌の白さと喋りで関西の永野芹佳ちゃんに」
米谷「は?肌?」
いつまで見えない話が続くのだと思っていると次に自分の名前が出て来る。
長濱「茜ちゃんは、努力と負けず嫌いさでは倉野尾成美ちゃんの足元にも及ばない」
守屋「あ……?」
倉野尾成美の名前は聞いたことがある。
負けず嫌いという印象を世間に持たれ、比較されたことがあるからだ。
長濱「ついでにテニスでは佐藤朱ちゃんに負けとる」
守屋「佐藤アカリさん!?もしかして、宮城の人?」
再び聞き覚えのある名前が飛び出し聞き返す。
同じ宮城県、テニスという共通点がある。
長濱「確かそうだけど、知っとる?」
守屋「やっぱり…………。私は、県大でその人にパーフェクトゲームで負けた……」
米谷「……へえ」
欅坂結成の一年前
高校2年生の夏、2014年度宮城県高等学校総合体育大会テニス競技準決勝にてシングルス1で佐藤朱と対戦していた。
守屋(つ、強すぎる――!こんな人がいるなんて……)
彼女はAKB48のメンバーと噂されており、ちゃらついたアイドルなんかに絶対負けないと意気込んだ試合だった。
しかし5-0のマッチポイントまで追い詰められていた。
一つ年上とはいえ格の違いを見せつけられたが、死んでも1ポイントは取ると望んだ最後のセットだった。
佐藤朱「ハア!」
高身長から繰り出されるサーブが来た。
死にもの狂いで追いつき打ち返すも打球は重く、ロブを上げてしまう。
最後は渾身のスマッシュを決められ、心を打ち抜かれた。
佐藤朱「ありがとうございましたー!」
守屋「ありがとう、ございました……」
佐藤朱「お疲れ!いや~強いね!」
完全試合で負かしといて、そのセリフはないと思ったが全く嫌味に聞こえなかった。
本当に強かったと思ってもらえているようで嫌な気持ちにはならなかった。
むしろ強すぎて清々しい気持ちになり質問する。
守屋「あの……どうしてアイドルをやってるんですか?」
佐藤朱「ああ。311の被災地訪問で来てたAKBを見てね、それですごく勇気づけられたの。だから私もあの人たちみたいに多くの人を明るく元気にさせたいと思って応募したんだよね」
守屋「!!」
勝手にアイドルなんてちゃらついていると思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。
もちろんAKB48が被災地に来て、歌って踊っていることは知っていた。
それを見に行きもせず逆に迷惑だと腹を立てていた。
勝つことだけにこだわっていた自分とは違い、全ての面で完敗を認める。
それは今の時点での話だが――。
守屋「私もっ、アイドルになります!!絶対!!そして、あなたを超えます!!!」
佐藤朱「おっほ!負けないよ~?」
守屋「絶対勝ちます!!」
その一年後に坂道グループ第二弾”鳥居坂46″のオーディーションを受け、気合で勝ち抜き今に至る。
守屋「必死過ぎて忘れていたよ。あの人のおかげで東京に憧れて、アイドルを目指したんだ。佐藤さんチーム8だったんだね、知らなかった……」
長濱「そうだったんだね……」
守屋「ねるから見てまだ私はあの人に及ばないってことだよね?」
長濱「悪いけど、まだ全然負けとる」
守屋「だよね。そう簡単に勝てるわけないか。でも、諦めないよ!」
長濱「頑張ろうね!」
米谷「それで?そろそろ結論言ってくれ」
長濱「最後に平手は、センターの魅力では小栗有以ちゃんに劣っている」
米谷「その子ならうちも知ってる。でも、平手とは真逆やんな」
長濱「いつかはあの子がAKBのセンターを張ると思うけん。平手が陰で魅せるなら、小栗ちゃんは陽ったい。月と太陽といったところか」
ダラダラと長い話の結論を言う。
長濱「まあ何が言いたいかと言うとね。個人のスキルでは全然チーム8にすら劣ってる私たちがどうして売れているかって話」
米谷「乃木坂さんの妹分としてデビューが決まった時点で売れることは決まっていた。制服を着させて、歌って踊れさえすれば誰でも良かったってことか……」
長濱「そう。極論、秋元康というネームバリューでその力でプロデュースされた。ただそれだけの話」
守屋「全て秋元先生の力……?」
長濱「仮に漢字21人で地下アイドルデビューしていたら成り上っていけたと思う?」
守屋「くっ、悔しいけど……無理だ……」
長濱「一流のダンサー、作詞作曲家、衣装さん、その他何もかも最高な環境のおかげと言わざるをえない。売れて当然。それなのに選抜がない私たちは本気でぶつかり合うことはせず、何もせずに平手に紅白に連れてってもらいバックダンサーをするだけ」
長濱「漢字は21人の絆とか言うとるけど2016年には終わっていた。チーム8は倍以上の47もおるのに絆が強く、全員が一つの方向を向いていたからこそ最強チームにまで登り詰めた」
米谷「センターに頼りきりだったうちらのせいなのかもしれない。いっつもバラバラやってん」
長濱「先月の武道館公演も平手たった一人が出れなかっただけで、漢字ではなくひらがなが出演した」
米谷「式にすると、平手>ひらなが>漢字20、か」
長濱「平手に頼り切ってしまった運営、メンバーをひらすら甘やかし続けた大人たち。いつかのかけかけでTMR西川さんみたいにズバズバ言ってくれる人は誰もいなかった」
米谷「確かにな。西川さんはアンチでもなんでもない。客観的に見て思ったことを言ったまで」
長濱「でもメンバーは何よりそれを恐れていた。本気でぶつかり合うことができずダメなことにダメだと言えなかったことがダメだったんだ。同じグループの仲間なのに、ぶつかるのが怖くて……」
米谷「ダメダメって他人の事言えんやろ?あんたも散々友香のことぞんざいな扱いしてた時期があったな」
守屋「え?何?」
無神経な守屋はそのことには気づかず話についていけなかった。
長濱「初めてだね。言ってくれたの」
米谷「言わせたんやん。たぬきやな」
長濱「ありがとう。いつかのSRの動画を見たお母さんにこっぴどく叱られた」
米谷「あれはてっきり冬優花が注意してくれると思ったんやけど、言わんかったんやな」
長濱「ふーちゃんですらもねるに遠慮してたんだと気づいた。自分でも動画を見て目が覚めた。そっから態度を改めたと。気づかんうちにねるも天狗になっとったかもしれん。いんや、そうなったのはねる自身の意思か」
長濱「アーティストを目指そうとした結果、アイドルでもなくなり中途半端なバラバラめちゃくちゃな素人丸出しお遊戯会に落ちぶれた」
長濱「私たちには競争心がない。何もしなくても選抜にいられる。胡坐かいて座ってるだけで仕事が入って来る。冠番組でただ座り、年に数枚シングルを出す。外仕事はライブ、ラジオ、雑誌の撮影くらい?」
守屋「――っ」
長濱「ハッピーオーラのひらなががいれば、漢字なんてなくなってしまった方がいいんじゃないかって――」
守屋「ねるッ!!」
長濱「ゴメン。でも今、その通りになりつつある」
米谷「なるほど――。漢字を全滅しにひらがなの美穂が送り込まれたんかもな」
長濱「欅はセンターの平手の存在が大きい。というより、欅は平手友梨奈とバックダンサーのみなさんってのが現状。言いにくいけどねるも一歩だけ出とる……」
米谷「あんたなぁ……自分で」
守屋「でも……否めないかも」
長濱「21人の絆なんてとっくの昔に終わってる。こんな冷え切ってるグループは他にない。全てのグループより群を抜いとる。間違いない。根本的な理由は何だと思う?」
守屋「ダメになった理由……ぶつかり合うのを恐れて臆病だった心?……勇気があれば――」
米谷「言わんとしてることは解るけど、あえて聞くよ」
長濱「愛だよ。愛がなかった。大人たちからもファンのみなさんからも送られていたたくさんの愛を拒否してしまっていた」
長濱「SNSや某掲示板にもたくさんの愛があった。好きの反対は無関心。アンチの人は好きだから批判や指摘してくれるんだと気づいた。嫌いなら放っておけばいいのにわざわざ言ってくれてるんだよ」
長濱「つまり愛があれば2016年のように今も坂を上り続けていた」
米谷「2016年……」
長濱「これが答えだよ。澤部さん」
チョーカーに仕込まれているであろうマイクから会話が筒抜けだと信じ澤部へ問う。
船の管制室で三人の映像を見て聞いていた澤部は笑う。
澤部「ハーっハハハハハハー!!!よくたどり着いたなぁ、ねるぅ!!」
笑い飛ばして大げさに長濱を褒める。
澤部「やっぱお前たちをここに連れてきて正解だったよ。よ~しこれにてゲームはおしまーい!みんなお疲れさまー!!」
澤部「ちょっとメンバーは少なくなっちゃったけどこれから愛は持って頑張れよ!!」
黒服4「……」
澤部「ってなるわけないだろー!!殺し合いの果てに気づくようじゃあ遅すぎたな。てか愛とか、ゲロさぶなんだよ!」
澤部「いやでもあーそうか!これが俺からの愛なんだ。だからお前たちは最後くらいは本気でぶつかり合って”愛”を証明してみせろ。その身を以ってな」
番組MCだった男はコンタクトを通じて少女たちを見守り続ける。
守屋「一番最初に言っていた『このグループはダメになりました』の答えってわけね……」
長濱「これがねるの最後の脱出方法……やったけど、ダメみたい」
米谷「これは脱出ゲームやない。”バトルロワイアル”、殺し合いだよ」
長濱「そうだよね……」
守屋「でも、今まで私は自分のことしか見えてなかった。いかに自分が目立てるか、ズルをしてでも爪痕を残せるかだけを考えて努力してきた!それは間違っていた……」
米谷「うちも同じ。グループのことなんか考えず自分ばっかやった」
守屋「本当に頑張らなきゃならないことから目を背けて、火遊びもしていた自分を殺したい!そんな私を殺してくれてありがとうねる!」
米谷「ありがとう、ねる。欅に入って来てくれて」
長濱「え、いやー……うっ――あっははぁああん!!!!」
加入した時は拒絶され嫌われ者だったのに今は感謝までされた。
感情が極まって抑えきれず、長濱の鳴き声が島に響く。
残り4人
結末やいかに。
1です。
ご指摘ご感想ありがとうございます!
・右目潰されたのに左目がなくなっててすみません
・佐藤朱さん硬式テニスですが守屋と戦わせたくて……ソフトテニスの助っ人と参加できますか?
時間入れるのを忘れてましたが8話終了時で2日目15時くらいです。
ねるの鳴き声←泣き声の間違えです
誤字脱字多すぎるので落ち着いてアップしていきます
明日9話とできれば最終話までやりたいと思いまーす
告知ありがとございます
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コメント
名無しのまとめラボ 2018年9月10日 22:53 ID: A0Njk5ODA
まさか平手より守屋を応援する時が来るとは思わなかった
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