最初から物語なんて無いぞー

目まぐるしく移り変わる現代で一番ダサいとされる存在、
つまり「変われない人」を歌にしてみた。その創作姿勢は買う。
人生多かれ少なかれこういうもんと言う気もする。
とかく、速く行くにも遅く行くにも、足並みをそろえるのは難しい。

これを、何もしなくてぼーっとしていたというより、
社会に反抗し続けてインフルエンサーになろうと画策し、
結果流行から取り残された櫻坂に歌わせるのも面白い。
グループの歩んできた道を、
格好悪さもひっくるめてグループのストーリーと位置付け、歌に乗せたわけだ。
勿論、たったの2ndで方向性がはっきり決まったとは明言しづらいが、
このストーリーそのものがどれだけ共感を呼ぶかは櫻坂の未来を大きく左右するだろう。

この歌の結論は「僕は絶対にBANされるものか」だという。
相当に好みが分かれるだろう。石頭の老害のような姿を見てもおかしくない。
はっきり嫌悪するのも鑑賞者の権利だが、留意しておきたいことがある。
それは、「自分を曲げるものか」ではなく「BANされるものか」である点だ。

BANを決裁するのは、自分自身ではない。社会である。
従って、我を通すにも、ただ怒りを撒き散らすだけではなく、
周囲を説き伏せるだけの理知と戦略を自分で身につけなければならない。

この点は「黒い羊」に見られなかった。
グループなりの貴重な気づきであり、
「変わらない」と言う主人公が、自分でも認知せず「変わった」点である。
この点を加味して、この歌が評価されることを願いたい。

曲は良い。アコギのパワーがいい。過去一年の坂道表題では1番だと思う。